「コピーライターの登竜門」として60年以上の歴史を持つ宣伝会議賞は、企業や団体・自治体などによる課題協賛によって成り立っています。そのうちの1社、第63回(2025年~26年)に課題を提供した、オタフクソース(本社・広島市)にその狙いと受賞作選考などの過程で得た気づきなどについて聞きました。
お好み焼きの食機会減少に、生活者の言葉で向き合う
「オタフクソース」と聞くと、多くの人が “あのオレンジ色のパッケージのお好みソース” を思い浮かべる。一方で、同社が近年向き合っていたのは、「お好み焼きを食べる機会が減っている」という課題だった。特に東日本エリアでは、お好み焼き自体への馴染みが比較的薄い地域もあり、「今日何を食べよう」と考えた時に、お好み焼きが選択肢に入る状態、食文化をどうつくるかがテーマになっていた。
マーケティング部で鉄板粉物メニュー領域のプロモーションを担当する長谷川徹氏は、今回の宣伝会議賞への協賛について、「生活者に近い立場の人たちのお好み焼きに対するイメージを知りたかった」と振り返る。同社ではこれまでも、「美味しい・簡単」といった利便性訴求や、家族で囲む食卓の温かさである情緒的な価値訴求、若年層向けのコミュニケーションなど、さまざまな切り口でお好み焼きの魅力を発信してきた。
オタフクソースの長谷川徹氏
ただ、企画を重ねる中で、「それは “お好み焼きに親しみを持っている当社” の視点になっているのではないか」という感覚もあったという。そこで今回、宣伝会議賞では「おうちでお好み焼をつくって食べたくなるアイデア」という課題を設定。社内だけでは出てこない、新しい角度の言葉や発想を求めた。
提供した課題は「おうちでお好み焼をつくって食べたくなるアイデア」
約250人が関わった選考で見えたギャップ
応募アイデアの選考では、まずマーケティング部で候補を絞り込み、その後は全社投票を実施。最終的には社長も含めた三次選考まで行った。約250人が投票で関わり、マーケティング部だけでなく製造や営業など、部門の垣根を越えて、生活者の声と向き合う機会になったという。
選考を経て協賛企業賞に選ばれた大野さとみさんのコピー
実際に集まったアイデアを見て、同社が改めて感じたのは、生活者から見た「オタフクソース」のイメージの強さだった。「やはり、“オタフク=お好みソース” という認識が強かった」と長谷川氏は振り返る。同社としては、「『ソースを売る=モノ売り』ではなく、消費者には『お好み焼を作ったり、食べたりする=コトの消費』をしてもらい豊かになってほしい」という考えを持っている。しかし、応募アイデアには商品軸の発想も多く見られ、自社が伝えたい価値と、生活者側の認識との間にギャップがあることを再認識したという。このギャップに気づけたことは、消費者とのコミュニケーションを設計する上で、財産になったそうだ。
協賛企業賞受賞のコピーを広告に採用
“正解は一つではない” という、マーケティングチームの変化
今回の取り組みは、マーケティングチームの考え方にも変化をもたらした。オタフクソースのマーケティング部門は、商品企画、販促企画、ファンコミュニティなどを含め約25人体制。人の入れ替わりも多く、これまでは、同社の経験則として、代理店提案を “正解” として受け止める部分もあったと長谷川氏は話す。
しかし、今回のように多様な生活者視点に触れたことで、「正解は一つではない」という考え方を改めて認識する機会となった。「いろんな意見を取り入れながら、自分たちなりに考えていく必要がある。そういうマインドは、今回の経験を通じて強くなったと思います」。今回集まった言葉や視点は、今後の販促物や特設サイトなどで活用していく予定だ。長谷川氏は最後に、「オタフクソースの社員ではないたくさんの人が、お好み焼きについてここまで考えてくれた。当社が設定した課題に触れていただいた方々の、その時間自体が、すごく価値のあることだと感じました」と語った。
課題協賛のお問い合わせは
宣伝会議賞事務局(株式会社宣伝会議内)
メール:skat@sendenkaigi.co.jp
■ 宣伝会議賞とは
宣伝会議賞Webサイトはこちら
「宣伝会議賞」は月刊「宣伝会議」が主催し、広告表現のアイデアをキャッチフレーズまたは絵コンテ・字コンテという形で応募いただく公募広告賞です。雑誌『宣伝会議』の創刊100号を記念して1962年に始まり、以降、若手コピーライターの啓発、ならびに人材の発掘・育成やコピーライターの意識の向上を目的に開催しています。現在は「コピーライターの登竜門」として知られ、日本最大規模の公募型広告賞の一つです。
協賛企業が提供する広告課題に対して、キャッチフレーズや企画アイデアを広く募集する事で、企業のマーケティング・ブランディング施策におけるクリエイティブ価値の創出機会として評価されています。審査員は広告界の第一線で活躍するコピーライターやCMプランナー、クリエイティブディレクター約100名が務めます。






