昨年に引き続き、面白法人カヤックの「おもしろ突破塾」が9月12日より開講します。本講座は多様なコンテンツを生み出すカヤックの7名のクリエイターから、広告企画やデザイン、新規事業、地方創生など7つの領域を通して、企画を世の中に広げるために必要な発想・共創・選択・届け方のすべてを体験できます。
講座を担当する講師が、カヤックのユニークなコンテンツが生まれる「手の内」について、お届けします。
毎年「なんでお前がこれやるの?」をやってきたキャリア
はじめまして。面白法人カヤックで執行役員・管理本部長をしています、丹治拓未です。
最初に白状すると、僕は皆さんがカヤックと聞いてイメージする、広告やゲームの「面白い企画を生業にするクリエイター」ではないつもりです。カヤックでのキャリアは、事業部長に始まり、経営企画、IR、資本提携、大型公立施設の基本計画、M&A、そして現在の管理本部長。毎年新しい「やること」が増えるのですが、そのたびに社内の半分以上の人が「なんでお前がこれやるの?」と思っていたはずです。自分自身もそう思いながら過ごしています。
そもそも、前職までは10年ほどデジタルマーケティングのキャリアで、コーポレートサイドとは無縁のキャリアでした。
普通の会社なら、マーケティングしかやったことのない未経験者に経営会議のファシリテーションやIR、ましてM&Aを任せるのはリスクでしかありません。しかしカヤックでは、こういう人事がわりと平然と起こります。お酒が飲めない人がお酒のプロジェクトをやったり、デザイナーが気付いたら人事課長になっていたりする会社です。
なぜそれが成立するのか。その中心にあるのが、カヤックが創業以来続けてきた「ブレスト」による文化形成だと僕は考えています。
今年6月に発売した『失言会議』という当社のブレストの全てを語ろうとした本では、カヤックのブレスト文化についての章を担当しました。そこでは、発想方法やアイデアに関わるテクニックの話はほとんど書いていません。どちらかと言うと「ブレストによって良いアイデアをつくる方法」というよりも、「ブレストを通じて良いアイデアをつくれる組織になる方法」に近いです。
つまり、組織の話になります。
「良いアイデア」から入る組織は、なぜアイデアが出なくなるのか
この記事を読んでいる方の多くは、こう思っているのではないでしょうか。「良いアイデアをどう出すか」を知りたい。そして、本を読み、研修を受け、発想法もフレームワークも知っている。なのに、月曜日の会議では使えない。
ここで一度立ち止まってほしいのです。もう一冊、発想法の本を読めば解決するでしょうか。おそらくしません。足りないのは「つくり方」そのものではないのです。
組織開発の分野に、ダニエル・キムの「成功の循環モデル」という有名な考え方があります。簡単に言うと、組織の成果は「関係の質→思考の質→行動の質→結果の質」という循環で生まれる。そして「結果の質」から取りに行く組織は、逆回転(バッドサイクル)に入る、というものです。
アイデアの現場で言えば、こうなるのではないでしょうか。
「今日は良いアイデアを出そう」
会議でよくあるこの一言は実は逆効果。その瞬間、場は評価モードになる。参加者は誰かの「正解っぽい発言」を待ち、上司の反応を確認してから話し、「ちゃんとしたこと」を考え込んで沈黙する。発言が減り(関係の質の低下)、思考は守りに入り(思考の質の低下)、無難な結論に収束して(行動の質の低下)、結局、良いアイデアは出ない(結果の質の低下)。
良いアイデアを求めた結果、良いアイデアが出なくなる。皮肉ですが、多くの会議室で毎日起きていることではないでしょうか。(※単純化しています)
カヤックのブレストが機能している理由も、実は発想法として優れているからではありません。結局のところ、「関係の質」から循環を回す装置だからです。
カヤックのブレストではとにかく量を出します。ただしその真の目的は、アイデアの当たり外れを探すことではありません。発言回数が増えると「自分も言っていいんだ」という空気が生まれ(関係の質)、思考の可動域が広がり(思考の質)、誰かが手を動かし始め(行動の質)、結果は副産物としてついてくる。書籍で「アウトプットよりアウトカム(人と関係性の変化)を見る」と書いたのは、このことです。
だから、皆さんの課題はこう書き換えられる可能性を持つと思うのです。
「良いアイデアをどう出すか」ではなく、「関係の質から回る循環を、自分の会社のどこにつくるか」。
この書き換えを前提とすると、ポイントを以下3つに整理することができそうです。
・循環を回し始める最小の場をつくること(隙間)
・回転を助ける関わり方をすること(場づくり)
・小さくても循環を回し続けること(文化)
今日は短いスペースですが、この3つを簡単に説明してみます。
