アイデアづくりは、場づくりから。〜面白法人カヤックの「手の内をのぞく」其の1〜

1.小さく試せる「隙間」を見つける

まず大事なのは、大きな導入をイメージしないことです。

「わが社もブレスト文化を」と大きく構えた瞬間、それは「結果の質」を求める話に戻ってしまいます。そうではなく、既存の仕事の中のわずかな「隙間」に、循環が1周する最小の場を差し込む。

たとえば、こんな隙間はどうでしょう。

まず思い浮かぶのはプロジェクトのキックオフです。カヤックでは、キックオフでよくブレストをしますが、そこで良いアイデアが出ることには期待していません。目的は関係性の立ち上げです。「この場では視点を出していい」「自分は関わっていい」という感覚をメンバー全員が持つこと。これが後工程の進み方を大きく変えます。

あるいはもっと手軽なのは、何かの会議の冒頭10分ほど、誰かが遅れて来る間を「発散の時間」として設定しても良いかも知れません。その10分間だけは、実現可能性も説明可能性もいったん脇に置く。

「〇〇さんが来るまでちょっとブレストしましょうか」と言って適当な発想を出し合う。早く集まればすぐに止めても良いし、盛り上がったら続けても良い。それくらいの軽やかさがおすすめです。

ここで期待値調整をひとつ。小さな場は、目に見える結果をすぐには返しません。ただ、それで正しいのです。良い循環は「関係→思考→行動→結果」の順に、時間差で効いてくる。10分のブレストの直後に変わっているのは、アイデアの質ではなく、「あの人はこういうことを考える人なのか」という関係性と、「ここでは言ってもいいんだ」という思考の構えです。結果を急がないこと自体が、バッドサイクルに戻らないための最初の条件だと思ってください。
(隙間を見つけた後、成否を分けるのは「お題」ですが、ここは長くなるので当社代表の柳澤の社長日記をご覧ください)

2.どんな役割でも関係の質を動かせる

「そうは言っても、自分はアイデアを出す仕事じゃないのでブレストが上手くできない」という声が聞こえてきそうです。

冒頭で述べた通り、僕自身もアイデア職人ではありません。でも、だからこそ言えることがあります。アイデアを「出す人」にならなくても、アイデアが出やすい場は少しの勇気で誰でもつくれるのです。難しいファシリテーションもいりません。

最も汎用的でハードルの低い関与はリアクションでしょう。受け止める、乗っかる、少し広げる。カヤックのブレストで最も重要な行為は、実は発言そのものではなくリアクションです。誰かが何かを言ったら、必ず誰かが返す。この連鎖があるだけで「いつ、何を言ってもいい」というメッセージが場に流れ、発言のハードルが下がっていく。

つまり、自分がアイデアを出していないときこそ、関係の質は動かせるのです。

たとえば、鎌倉の地域コミュニティ「カマコン」では、地域の困りごとを持ち込んだ人のお題を、参加者全員でブレストします。面白いのは、ブレストが終わった瞬間、それまで傍観者だった人たちも、ちょっとした「協力者」に変わっていることです。

他にもアイデアを出し合った時間そのものが、関係性の構造を変えてしまう機会を何度も見てきました。

3.組織文化を「エピソード」でつくる

隙間で小さく試し、場も盛り上げた、最後は循環を「回し続ける」仕組みです。

文化は号令では生まれません。「その時間に誰がどう関わったか」の蓄積こそが文化になります。カヤックは、そのために必要なものを「採用」「評価」「制度」「エピソード」の4つに整理しています。

この中で一番触りやすいのは「エピソード」だと思います。ここで言うエピソードとは、大げさなものでなくて良いのです。

「あのブレストで、普段いちばん静かな〇〇さんが、いちばん面白いことを言っていた」
「あの部長が、若手の変な案に真っ先に乗っかっていた」

そういう、関わり方についての小さな物語のことです。

こういう話が語られるたびに、二つのことが起きます。一つは、言った本人に「言ってよかった」という記憶が残る。もう一つは、聞いた人に「ここでは言っていいらしい」という予告になる。文化は号令ではなく、この蓄積で広がっていきます。

「あの企画名は、実はあのときの一言」といった類の結果側のエピソードは、循環が回り続ければ後から勝手に生まれてきます。

何より、続くブレストの条件はまずは「楽しさ」です。うまくいったかどうか以上に、楽しかったかどうか。「今日は楽しかった」という記憶とその会話がエピソードとなり、再参加を生み、コミュニティを育て、やがて文化になる。循環の燃料は、突き詰めればこれが根幹だと考えています。

講座では「わかる」を「試せる」に変える、を目指します

ここまで読んで、「理屈はわかった。でも、うちの会社でどこから手をつければ……」と思った方。その感覚こそが、今回の講座の初回で扱うテーマです。

発想法を教えてくれる講座は、世の中にたくさんあります。この講座の初回で僕が扱うのは、学んだことを、自分の会社のどこで、どう小さく試せるかです。今回の記事では、その触りを少しだけご共有させてもらいました。

講座では皆さんが自社で、月曜日から始められる第一歩目を持ち帰る回にできればと思っています。

カヤック おもしろ突破塾

開講日 2026年9月12日(土)19:00~21:30
講義回数 全8回  ※隔週土曜日開催
開催形式 教室(表参道)開催
※最終回のみ、鎌倉のカヤックのオフィスにて開催

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丹治拓未

面白法人カヤック
執行役員/管理本部長

大学卒業後、セプテーニでソーシャルメディア部門の立ち上げ、ユニクロでデジタルマーケティング領域のマネージャーなどを経験。2019年春にカヤックに参加後は、事業部長を経た後にグループ戦略室でIRや連結予算編成などを通じた経営の仕組み作り、事業開発や公共案件等による新たな成長機会獲得のための取り組みに従事。現在は執行役員 管理本部長としてバックオフィス全般の責任も担うとともに、グループ全体の経営基盤強化と成長戦略の推進を引き続き主導。北海道女満別出身、2男児の父、趣味は読書。中小企業診断士。

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