「怖すぎる」から子どもの夢へ 「NO MORE映画泥棒」の“カメラ男” ハリウッド作品とコラボする超人気キャラへ進化した20年の舞台裏

映画館で長い予告編が終わり、いよいよ本編が始まる――。その合図として、おなじみの「カメラ男」を思い浮かべる人も少なくないだろう。

「映画館に行こう!」実行委員会は8月28日、全国の映画館で上映する映画盗撮防止キャンペーン映像「NO MORE映画泥棒」を6年ぶりにリニューアルした。新たにスマートフォンによる盗撮を描き、現在の映画鑑賞環境に即した内容に刷新。キャンペーングラフィックも一新した。

実行委員会が把握する映画館での盗撮報告は2025年に83件あり、このうち外国人観光客による事案は76件だった。日本の法律を知らない訪日客が、悪意なく記念のつもりでスマートフォンを使って動画を撮るケースが多いという。実行委員会は文化の違いも背景にあるとして、スマートフォンによる盗撮への注意と多言語対応を強化した。

「NO MORE映画泥棒」が始まったのは2007年。映画館で映画を盗撮する「犯罪者」を象徴する存在として登場したカメラ男は、約20年を経て、フィギュアや写真集になり、ディズニー作品や仮面ライダーと共演するまでになった。法律を周知する啓発映像から、他作品とも掛け合わせられるキャラクターへ、「NO MORE映画泥棒」はどのように変化してきたのか。

映画盗撮防止法の施行2カ月前に誕生

「NO MORE映画泥棒」の出発点にあるのが、2007年に成立した「映画の盗撮の防止に関する法律」だ。同法は、映画館などで盗撮された映画の複製物が多数流通し、映画産業に大きな被害が発生している状況を踏まえて制定された。映画の盗撮を防止し、映画文化の振興と映画産業の健全な発展につなげることを目的としている。

リニューアルされた「NO MORE映画泥棒」メインビジュアル

法律は2007年8月30日に施行された。「NO MORE映画泥棒」はそれに先立つ6月30日から、「映画館に行こう!」実行委員会による映画盗撮防止キャンペーンとして上映を開始した。

誕生の直接のきっかけは、日本で盗撮された可能性が高い、日本語字幕入りの海賊版DVDが2007年に出回ったことだった。実行委員会が電通に相談し、電通が大きなコンセプトとクリエイティブアイデア、キャラクター、ストーリーを提案。制作はロボットに発注した。

劇場内での盗撮が犯罪だと誰にでも分かるよう、当時流通していたビデオカメラを参考に、頭部がカメラの怪しいキャラクターを開発した。企画段階のカメラ男は全身タイツ姿だったが、ロボットのCMディレクター、耶雲哉治氏の演出で黒いスーツに変わり、現在の姿になった。耶雲氏は2007年から全シリーズを手掛け、2026年版も演出を手がけている。

黒いスーツにビデオカメラ型の頭部を持つカメラ男が映画を盗撮し、それをパトランプ男が取り締まる。実行委員会は現在も、映画盗撮防止法を広く告知・浸透させるため、キャンペーンを続けている。

盗撮報告は2025年83件、外国人観客事案が76件

政府資料では、映画館での盗撮は2008年に52件、2009年に37件とされている。その後、実行委員会が把握した盗撮報告は、2014年が29件で、うち外国人観客による事案は5件だった。2015年は31件のうち10件、2016年は16件のうち7件、2017年は22件のうち6件だった。

次のページ
1 2 3 4
この記事の感想を
教えて下さい。
この記事の感想を教えて下さい。

この記事を読んだ方におススメの記事