タリーズコーヒージャパンは、山口大学医学部付属病院に新しい店舗をオープンした。同社の病院内出店は延べ100店舗。なぜタリーズは病院内に出店を続けるのか。そこには、創業者の松田公太氏の経験と強い思いからだ。
タリーズの病院内店舗は、今年100店舗を超えました🏥☕
山口大学医学部附属病院店は、その節目となる記念店舗です。タリーズはこれからも一杯のコーヒーを通じて、来院される方や医療従事者の方々のかけがえのない時間に寄り添えるカフェでありたいと考えています。☕️#タリーズ#MakeOnesDay pic.twitter.com/DoaDas2ugj
— タリーズコーヒージャパン株式会社 (@Tullys_jp) 2026年4月6日
100号店のオープンを知らせるタリーズのXの投稿
松田氏には、拡張型心筋症という難病と闘う弟がいた。大学病院に入院し、外出はできない。松田氏が弟に、退院したら何をしたいか聞いたところ、大手チェーン店に行きたいと答えたそうだ。日常生活に当たり前にある身近なチェーン店も、入院している人が行くにはハードルが高く、懐かしく感じられる。「日常な空間を病院内に提供したい、病院の殺風景な景色を変えたい」との思いから、さまざまな病院にアプローチ。2024年に出店した東京大学医学部附属病院内の「タリーズコーヒー 好仁会東大病院店」を皮切りに、これまでに延べ100店舗を病院内で展開している。
全国約830店舗の中で、病院内店舗は全体の1割以上を占める。車いすでも利用しやすいようにレジカウンターの足元にはくぼみを設け、商品を待つカウンターを低くし、手すりを設置。テーブルやいすもゆったりと配置して動かせるものにし、車いすや点滴スタンドを利用する患者にも使いやすいレイアウトを意識している。
車いす利用者のためにくぼみを設けたレジカウンター。
さらに一部店舗では、絵本の読み聞かせをしたり、聴覚障害のある人向けに手話でのコーヒースクールを実施したりする取り組みも。従業員が起案し、手話のできる人が入社したり、入社後に手話を勉強したりして実施しているという。病院内店舗では利用者の約8割が患者とみられ、「患者のよりどころになっているようだ」(同社広報担当者)。
今回の100号店のリリースをSNSで広報したところ、入院していた人から「普段の生活を取り戻す、社会的リハビリの場所です」といったコメントや、「寝たきりまで行きましたが、リハビリをがんばって、タリーズまで行けた時は日常の欠片を少し取り戻せたようでめちゃくちゃ嬉しかったです。」など、病院とタリーズにまつわる思い出話や温かい言葉が並んだ。
車いすや点滴スタンドをつかう利用者に配慮したレイアウトになっている。
「入院してた友達とコーヒー飲んだかな。外出も摂食もままならない友人との一時を貰いました」。松田氏が弟の声をきっかけに作った病院内の店舗は、入院している患者にとっても、お見舞いに来た人にとっても、貴重な場所になった。「皆さんから言葉をいただき、寄り添えているのだなと実感しました」と、同社の広報担当者はうれしそうに話す。コロナ禍を経て、病院に行くことも、病室で話すこともはばかられる雰囲気もあったが、カフェが話せる場所になってほしいと願っている。「忙しい医療従事者にはほっと一息ついてほしい。患者さんやご家族の皆さまにもコーヒーを飲みながらゆっくりお話しできる場所として使ってほしい」。さまざまな事情を抱えた人も多い病院で癒しの場所を提供する取り組みは、今後も続く。


