――Webサイトの売り上げを伸ばすには「CRO」が有効と聞きました。「CRO」とは何ですか?
石嶋氏 「CRO」とは「コンバージョン率最適化」のことです。「CRO」は、Conversion Rate Optimizationの頭文字ですね。「コンバージョン」とは、平たく言えば「お客さま化」です。
お客さまに変えるとは、商品やサービスを買っていただくということです。「購入に至るプロセス=コンバージョン」(図)とも言えます。

――では、「コンバージョン率」は「お客さま化」できた割合?
石嶋氏 そうですね。仮にサイトを訪れた1万人中、50人が商品やサービスを買えば、「お客さま化」率、つまりコンバージョン率は0.5%となります。そして「Webサイトを訪れた人数×コンバージョン率=成果」という式が成り立ちます。
――「CRO」はどんなときに効果を発揮するのでしょうか。
石嶋氏 先ほどの式を見てください。成果を高めるには、「訪問者」「コンバージョン率」のどちらかを増やす必要があります。「訪問者数」を増やすには検索エンジン対策をしたり、広告を出したりしなければなりません。「コンバージョン率」を上げられれば、訪問者数や広告費用を増やさなくても成果の最大化が図れます。
「CRO」は「コンバージョン率」を上げること、集客した人たちを「お客さま化」する効率を高める施策なんです。
――コンバージョン率の平均は、どれくらいなのでしょうか?
石嶋氏 Webサイトの平均コンバージョン率は1%と言われています。
しかし業界の上位企業のWebサイトでは、「CRO」でおよそ6〜10%程度までコンバージョン率を上げているケースが多いようです。
――本当にコンバージョン率を上げられるのでしょうか…A/Bテストをしたり、アクセス解析ツールを見ながら細かく調整している企業は多いと思うのですが。
石嶋氏 コンバージョン率を大きく改善するには、お客さまの声を聞いたり、Webサイトを見るさまを録画したりして、検証することが欠かせません。アクセス解析では、訪問者のアクションが数字になって表れます。だからこそ比べやすくなるわけですが、これは一方で、Webサイトの弱みであるとも言えます。
――Webサイトの弱みですか?
石嶋氏 そうです。実店舗では実際にお客さまのご相談に乗ったり、店内をご覧になるようすを観察したりできます。「何か見つからないものがあるのかな」などと、お客さまの表情やしぐさ、動き方などからも改善点が見えてくるわけです。
Webサイトで数値に目をとられると、こうしたことを忘れてしまいがち。それがある種、Webサイトの弱みなのです。しかし本来、実店舗もWebサイトもモノを売る基本は全く同じはずです。
――サイト上の行動などわかるのでしょうか。
石嶋氏 はい、いまではそういうツールも手軽に利用できるようになりました。ツールを使わなくとも、ある程度までは、お客さまの意見を基にした「CRO」は可能ですよ。
お問い合せ
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TEL:03-5405-4343(代)
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――どうすればいいのでしょう?
石嶋氏 例えば、次のようなプロセスを考えてみましょうか。
- Webサイトに来た=1000人
- 商品詳細ページを見た=20人
- 購入ボタンを押した=5人
このプロセスを改善するために、どんなことが考えられますか?
――商品詳細ページに移動していないのは、説明が悪いんでしょうか。もしかして写真かも…そもそもサイトの中で見つけづらいとか…。
石嶋氏 仮説を立てる際、購入者の分析が役に立つ場合があります。例に挙げたプロセスでは、「詳細ページ」が障害(ボトルネック)になっています。購入ボタンは4人に1人が押しているので、詳細ページを訪れる人が増えれば、売り上げも増えるはずです。
ここでいきなりA/Bテストなどを始めないこと。購入者に「買った決め手」を尋ね、集計してみましょう。例えば、顧客は高級感よりも雑貨的なテイストを求めて商品を購入していたとします。それを知らないまま、「高級商材を扱っていると思われたい」という意識でA/Bテストを進めてもムダになってしまいます。
きちんと顧客が自社に求めることから逆算すれば、必要なデザインを想定しやすいですし、コストも減らせます。テキストや写真は置き換えが比較的カンタンなのでアレコレ試したくなりますが、もっと根本的なところで間違っているケースも少なくありません。手当たり次第に試行錯誤するのはお金と時間のムダです。

――なるほど、日ごろから顧客の声を収集しておくことが大事なのですね。
石嶋氏 はい。お客さまの意見や動き方と、実際のWebサイトと、どこに食い違いがあるのか。購入に至るプロセスのボトルネックを洗い出し、何がいけないのか仮説を立てる。そして仮説の検証方法を決め、有効なものから実行し、変化を計測する。それが「CRO」です。
ですから、「CRO」では記録を残すことが何より重要です。記録にもとづいて、実直に仮説を検証する。これを繰り返していけば、着実に数字はついてきます。
――なるほど。「CRO」の基礎が分かってきた気がします。
石嶋氏 では、大事なポイントをおさらいしましょうか。
- 「CRO」とは「お客さま化」するプロセスの効率を上げること
- 効率を上げるための仮説は、購入者の分析にヒントがある
- 「CRO」では記録を残すことが何より重要
――これで「CRO」を行えば一安心ですね。
石嶋氏 ああ、もうひとつ絶対に忘れてはならないことがありました。「CRO」に終わりはありません。
――一度行えばいい訳ではないのですか…?
石嶋氏 ダメです。消費者の好みやニーズは日々移り変わります。競合他社もWebサイトをどんどん改善していきます。せっかく売り上げがあがるようになっても、行動を止めてしまっては、また下がってしまいます。
あるいは、こう考えてはどうでしょう。「CRO」はセールスマネジメントやオペレーション改善に似た取り組みです。改善点というのは、どんな場合でも必ずある。改善を繰り返すからこそ、前年・前期よりも売り上げを高められるんです。
だから「CRO」を繰り返せば、自然とマネジメントの素養を鍛えることにもなると思いますよ。
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