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コラム

高広伯彦の“メディアと広告”概論

セグメンテーションからコネクションへ

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脱マス思考のターゲット視点

マーケティングコミュニケーションを進める上で、最初に行われる作業の一つはどういったターゲットを対象にするかを設定することにある。従来的なやり方・発想としては、年齢・性別・所得などのデモグラフィック(人口統計学的)、行動・価値観・購買動機・商品やサービスの使用程度による分類であるサイコグラフィック(購買者の心理的要因)を切り口として「セグメント(分類)」されてきた。

これらの分類は「全体」から「部分」をマーケター側が「勝手に」区切ったものであって、マーケティングコミュニケーションの対象としては「それぞれの点(=人)」となる。一方、インターネットがもたらした人々の「つながり」はマーケターによってそのような集まりをセグメンテーションされたものではなく、自発的に構成された「コネクション(接続関係)」によるものだ。

この「コネクション」によって構成される人間関係を「トライブ tribe(種族・共通の趣味や属性をもった仲間)」と呼ぶ(※ちなみに米広告大手DDBワールドワイドのインタラクティブ広告部門はTribal(トライバル)DDBで2001年に設立。先見の明)。インターネットは本来的に「inter-」という接頭語が示すように相互のつながりを特性としてもっており、昨今バブルな様相を見せているソーシャルメディアブーム以前から、コネクションによるトライブ形成を後押ししてきた。

個人ホームページと言われた時代、ブログが普及した時代を経て、いま突入しているソーシャルメディア時代がそれまでと違うのは、「友人・知人探し」が容易になってきたことにある。従来型検索エンジンは「情報探し」を得意としてきたので、情報間の「リンク」を支援してきてくれたわけだが、ソーシャルメディアは「友人・知人探し」とその「コネクション」を推し進める。結果、オンライン上に「トライブ」が形成され、そこでの情報伝播・共有がこれまでにないスピードで行われるようになってきているのだ。

しかし、ここまでだと従来のコミュニティー論議とさほど変わりがないのではないか、と思われるだろう。そこで挙げておきたいのが「ソーシャルグラフ」(人々のつながりによって構成されるネットワーク及びその図。ソーシャルグラフの概念図についてはこちらを参考に )である。

人々はコミュニティーという「場」に集まっている、というよりも、複数の人間関係に「属し、関わって」おり、それが複雑なネットワーク図を構成している。トライブの構成員は必ずしも一つのトライブだけにつながっているわけではない。例えば、ある人物は広告業界の友人関係の輪にも、趣味であるサッカーの友人関係で構成された関係の輪にも、はたまた父親たちの育児情報交換の輪にも属しているかもしれない。これは、一人の人が得た情報が3つの人間関係に共有される可能性があるということを示している。つまり、マスメディアだけの時代とも、従来的なインターネットにおける情報伝播とも違う、新たな情報チャネルの誕生として理解しなければならない。(次ページに続く)