最後にものをいうのは「質」
林 信行(ITジャーナリスト兼コンサルタント)
本連載もこれが最終回。これまでの内容を駆け足で振り返ろう。1回目は筆者の仮説に基づき情報過多の時代、人々に関心を抱かせ行動を起こしてもらうための3つのアプローチ(時間軸、親密軸、空間軸)を紹介した。2回目は大量の情報を快適にブラウズしてもらい、中から欲しい情報を見だしてもらう手法がiPadではやりやすいことを紹介した。前回は、1回使って終わりではなく、「また使ってもらう(=retention)」の面で工夫しているアプリケーションを紹介した。
では、最終回のテーマは? これは「質」以外に考えられない。EvernoteのCEOはよく「今はいいものがあれば確実に広まる時代」と力説している。逆の見方をすればiPhone用30万本、iPad専用でも4万本以上あるアプリで、人々に認めてもらう最終兵器は「品質」以外にはない。
最近、そのことを再認識させてくれたのが無印良品がリリースしたノートアプリの「MUJI NOTEBOOK」、カレンダーの「MUJI CALENDAR」と旅行情報の「MUJI to GO」だ(いずれも国内トップクラスの開発者の手によるもの)。特にNOTEBOOKとCALENDARは、既存の人気ビジネスアプリと比べても、品質の点で堂々と勝てる出来映え。日常使いする気になれる、まさに「良品」――一体、これ以上の宣伝があるだろうか。
前回も紹介した短編ムービーのようで、実はしっかりとしたインタラクティブカタログの「tabio」のアプリも、平凡社の電子巻物「くらしのこよみ」も内容や仕上がりが素晴らしく、これなら人に勧めようという気にさせる。
短期間で話題を盛り上げる目的でない限りは、クライアントを説得してでも高い「質」を追求して欲しい。その方が仕事としてもやりがいがあるはずだ。また日本のクリエイティブ品質の高さをiPadという扉を通して世界に知らしめれば、それが国力の向上にもつながるかもしれない。(「宣伝会議」2011年2月1日号から)
- モバイルマーケティング注目事例(第3回)「ノティフィケーションでリテンションを上げる」
- モバイルマーケティング注目事例(第2回)「パラパラ写真のアプローチ」
- モバイルマーケティング注目事例(第1回)「空間軸×広告のアプローチ」
(はやし・のぶゆき)
1980年頃からアップルの動向に関心を抱き、90年から本格的な取材活動を始める。技術的取り組みやものづくりの姿勢、経営、コミュニティーづくりなど、多方面にわたり取材。『iPadショック』(日経BP)など著書多数。
「WEB MARKETER’S view」バックナンバー
- 【オウンドメディアマーケティング(3)】「オウンドメディアやりたい」(2012/3/01)
- 【オウンドメディアマーケティング(2)】オウンドメディアに必要な「放送設備」(2012/2/23)
- 【オウンドメディアマーケティング(1)】「ソーシャルな時代のオウンドメディア」(2012/2/16)
- 佐藤圭太朗の「WEBメディアビジネス注目事例」(第4回)(2011/6/27)
- 得丸英俊の「デジタル時代に必要なスキルとは?」(第4回)(2011/6/20)
- 三科恵三の「WEBマーケティング 注目事例」(第2回)(2011/6/13)
- 小池政秀の「ターゲティングの進化」(第4回)(2011/6/06)
- 鈴木健の「いま、自社メディアをどう活用するか」(第4回)(2011/6/02)
新着CM
-
クリエイティブ (コラム)
評価軸を理解して競合プレゼンに勝つ
-
人事・人物
ローソン、CS推進室長(23年3月1日付)
-
AD
クロス・マーケティンググループ
クロス・マーケティンググループ、マーケティングDXを推進する人材を募集
-
AD
広報
ポストコロナで差がつく広報のデジタル化&グローバル化
-
人事・人物
博展、新社長に原田淳氏 田口氏は会長に
-
コラム
「耳の聞こえない生活」を知るのはとても豊かな時間だった(岸井ゆきの)【前編】
-
AD
特集
成長企業の人材戦略
-
クリエイティブ
新聞は反転できる媒体 東京卍リベンジャーズ最終巻で7種の「逆転広告」
-
広報
バイオ燃料使用の都営バス出発式 小池知事、ハローキティ参加