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看板女優もツイッター投票で決定 受け手の反応を呼吸しながら作品をつくる―「ツイゲキ」主宰 片岡Kさん(『宣伝会議』2011年7月15日号より)

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稽古風景

ツイッター上で旗揚げされた「ツイゲキ」の稽古風景。

テレビ番組の脚本・演出を手掛ける片岡Kさんは、2010年からツイッター上で劇団の結成を呼びかけ、プロとアマチュア混在の劇団「ツイゲキ」を立ち上げた。さらに今年は「ツイゲキ」(@twigeki)の映画版とも言える「ツイルム」(@twilm_k)を始動。キャスト、スタッフ、さらに出資者までツイッターで募った自主制作映画が8月末に公開の予定だ。ソーシャルメディア上での対話から得た体感をもとにしたクリエイティブ。その発想と活動は、マーケターにとってヒントとなることも多いのではないか。「宣伝会議」7月15日発売号、「傾聴から始まる企業戦略」内に掲載の片岡さんのインタビュー記事の一部を抜粋して紹介する。

―「ツイゲキ」を始めようと思ったきっかけは。

テレビ番組は最初からマスを狙って作るものですけど、どこにいるかもわからない観客に向けて、最初から多額のお金をかけて手探りで作品を作るなんて、ほとんど賭けみたいな話ですよね。そもそも今の時代、絵に描いたような大衆なんて、存在しないと思いますし。

しかも人気が出ても、そこからパイが先細っていくのが現在のビジネスモデル。テレビドラマが映画化され、DVD化され、ゲームになり、ノベライズ商品が出る…と、進めば進むほど確実にお客さまは減っていく。三角形になっているんですよね。これまでは、それを当然と受け止めていたのだけれど、ユーチューブやツイッターがでてきたときに、この三角形を逆にすることができるかもしれないと思ったんです。

ただし漫然と作品を作っているだけで、三角形の裾野が広がるわけではないですし、周囲の人たちを巻き込み「これは僕たちの作品だ」と思ってもらって、応援してもらえる仕掛けが必要です。そこで僕が考えたのが、作る過程を公開してしまうこと。芝居も映画も観るよりも作るほうがはるかに楽しい。それなら、そのプロセス自体をエンタテインメント化してしまえばいいじゃないか。そう考えて始めたのが「ツイゲキ」です。

―作る過程にファンを巻き込み、その声を聞きながら作品を作っていく…。クリエイターとして自分の作りたいものとの間に葛藤はないんですか。

白状しちゃうと、僕には自分が作りたいものなんて、ないのかもしれない。そもそも僕は映像クリエイターになろうなんて、ちっとも思ってなかったんですよ。何かを作りたかっただけで、それは映像でもトマトでも、なんでもよかった。ただ作るなら、世界中の人たちから愛されるトマトじゃなくて、一流の料理人に『うちの料理は、片岡さんとこのトマトじゃないと、だめなんだよね』と言われるようなトマトが作りたかった。だから、これまでの仕事も誰かの『こんなものが観てみたい!』という声に応えようとしてきたところがあります。

 みんなの意見を聞いていくと『えー、こんなキャストが選ばれちゃったの?僕はこっちの子の方が良かったのに…』なんて、こともしばしば。でも僕の場合、縛りが多いほどクリエイター魂が刺激される。自分の望むキャスト、シナリオで、自分の作りたいものを作るより、人から求められることを実現する過程に喜びを感じてしまうんです…。
(インタビュー一部抜粋)。

インタビューの最後、「どこにいるのかわからない観客に向け、手探りで作るのではなく、最初からお客さまが決まっていて、その人たちの望むものを形にしていくって、新しいものの作り方だと思う」と話していた片岡さん。ソーシャルメディアが浸透し、企業と消費者の関係性のフラット化が進む環境下、自然体でファンや社会と向き合う片岡さんのクリエイターの姿勢には、マーケターの仕事の現場で活かせるヒントも多いのではないだろうか。

「宣伝会議」7月15日号
巻頭特集:『ソーシャルリスニングとは何か? ―― 傾聴から始まる企業戦略』より一部抜粋