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コラム

ネットで人気者(もしかしたら嫌われ者かも)になるネタの生まれ方

ネットでウケるものは「人間」を理解しなくては理解できない

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これまで3ヶ月ほど「これがネットでウケた理由はかくかくしかじか…」などとエラソーに言ってきました。すいません。実際のところ必ずしも私の分析が正しいか、という点において100%の自信はないのですが、多分「経験」によって少しは精度が上がる、ということは言えるかと思います。

これまで5年3ヶ月、ほぼ毎日(正月休み除く年間360日ほど)ネット上で発生していることを見てはニュースにするという仕事をしてきました。その後、編集する媒体も増え、扱う記事もどんどん増えていきました。そうなると、どれだけバカであっても、何がウケるのか、というものがぼんやりと分かってきます。また、「これは鉄板」というネタもよく分かるようになります。

ウェブサイトというものは、人に来てもらわなくてはいけません。「見出し」や扱う「テーマ」、「時流」、「誰が言うか」など、来てもらうための要素は様々ですが、そこを見極める(いや、予測する)ためには観察の積み重ねと、時には「自ら中に飛び込む」ということが重要になります。

今回、私にとってアドタイの連載最終回ですので、総括的なことを何か書こうとは思っていたのですが、書くテーマに悩んでいました。

色々悩んだものの、最終的には小手先のテクニックや知識というよりも、根本の「たくさん見る」「中に入る」ことの重要性をお伝えした方がいいかなぁ、と日曜日の夜、参宮橋の飲み屋で美人ギャルを脇に生ビールを飲み、肉巻きアスパラを食べながら考えていました。

企業の方々も「ネット/ソーシャルメディアは使ってこそ理解できる」と口を揃えて言いますね。企業にまつわる様々な炎上騒動にしても、当初はビビっていた人が、鎮火後に会ってみると「いやぁ、あの時はタイヘンでしたが、今は経験して良かったです。許してもらえましたし…」なんてことを晴れ晴れとした顔で言うところを見てきました。

オーマイニュースのイザコザに突然割って入り色々学ぶ

というわけで、ここでは時計の針を2006年夏・私がニュースサイト編集者としての活動を開始した時に戻し、私自身、ネットのことが何が何やらわからなかった時代を振り返ってみます。その時にかなり重大な役割を果たしたのが「市民みんなが記者だ」のキャッチフレーズで、サイトオープン前からかなり話題となった日本版オーマイニュースです。

このサイトは、一般の「市民記者」が、マスメディアとは別の視点からの記事を投稿し、結果的に日本のジャーナリズムを変えることも目指されていたと理解しています。結局オーマイニュース日本版は2009年4月をもって閉鎖されるわけですが、常に何らかのイザコザを抱えているサイトでした。

それは「市民記者VS運営スタッフ」「市民記者VS市民記者」「市民記者VS(コメントだけ書ける)オピニオン会員」などでした。問題の解決には、当時流行っていた「Web2.0」ということばを体現すべく編集部側から様々な意見を呼び掛け、編集部で結論をつける、といったことをやっていましたが、大抵の場合、その結論にはブーイングが飛び交っていました。人は多様なのだから、これは当たり前ですね。

2ちゃんねるにはオーマイニュースヲチスレ(オーマイニュースを生温かく見守るスレッド)も立ち、運営の問題、痛い市民記者についての罵倒、彼らの過去の痛い発言の晒し合いなどが連日のように活発に行われていました。

鳥越俊太郎氏の過去発言に異議申す

オーマイニュースは元々鳥越俊太郎初代編集長が、「異論、反論ドンドン書いて下さい!」と呼びかけていたものの、2006年11月、「罵倒が多いからオピニオン会員制度を辞めて欲しい」という声が増えて、コメント欄の運用について悩んでいました。市民記者しか書けないようにすべきだ、いや、オピニオン会員がいなくてはまっとうな議論はできない! ということで侃々諤々の議論が展開されていたのです。

その時、私自身は当時人気がなかった自分が関わるニュースサイトを話題化すべく、このオーマイニュースの「VS」構造に「外部」としていきなり入り込みました。「オーマイニュースVS外部ニュースサイト編集者」というプロレス的構図を新たに作ったのですね。これは当時人気のあった彼らを使った「コバンザメ商法」です。

私は自分のサイトに「お前ら、腑抜けたこと言ってるんじゃねぇよ、カネもらって記事書いているヤツが何を甘えたこと言ってやがる! 編集長が発言した内容はなんだったんだよ、この野郎」といった趣旨の意見記事を書き、オーマイニュースにケンカを仕掛け、なんとか注目してもらおうとしました。

するとすぐにオーマイニュースの市民記者から記事で反論が来て、さらに私が反論をし、「そういう意図か」とその市民記者も納得してくれる、という記事の応酬がありました。この時、一部の市民記者・オピニオン会員・2ちゃんねるヲチスレ住民の中には私のことを支持してくれる人もいて、いつの間にか私もオーマイニュースの一部関係者とネット上で交流するようになりました。

挙句の果てには彼らとオフ会をやり、私の家に泊まる人まで出ました。その後、副編集長を含めたオーマイニュースの編集スタッフとも直接お会いすることができ、「なんでいつも炎上ばかりしているんですか?」などと失礼な質問をしたことを思い出します。

自分のサイトでウケる記事を必死で出そうとしつつも、他のサイトでもウケる記事を探し、さらにはオーマイニュースという「公開ネットイザコザ場」といった感のある教材をじっくりと見ることにより、少しずつ「ネットでウケるもの」を学べたように思えます。 (次ページへ続く