コラム

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コミュニケーションミックス考:これからのブランディング

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僕が実施案を考える上で、気になっているモノやコトをネタにお話を展開しています。前回は、ブランドにとっての「ファン」の重要性について言及しました。今回は「これからのブランディング」という観点から、ファンを育てるコミュニケーションについて、考えを発展させていきたいと思います。

境界線は、愛着がある/なし

前回、僕は、ファンとは「ブランドへの関与度が高い個人投資家」だと定義しました。「ファン」と「一般顧客」の境界線は「ブランドに愛着がある/なし」という辺りに引かれるイメージです(⇒下図参照)。従って、ファンの育成とは「一般顧客のブランドに対する愛着を深め、継続的な投資ならびにポジティブなクチコミを促す」ということになります。大ざっぱな説明ですが、考え方のスジをカンタンにおさらいすると、こういうことになります。

さて、今回の本題は、この目的をかなえる顧客育成スキームの探索です。顧客育成の取組みはCRMが担うべき役割だと言われています。

しかし、今日多くの仕組がそうであるように既存のCRMもまた、時代とのギャップを埋める補修工事が必要な時期に来ていると思います。ひと昔前のCRMは (購入単価)×(頻度)=(顧客ロイヤリティ)という大胆な理屈で運用されていました。この理屈でいくと「ファン ≒ たくさん買ってくれる顧客」「ファンの育成 ≒ 顧客にたくさん買わせること」という短絡的な解釈になりかねません。

マスメディア広告により大量のプロスペクトを必要に応じて獲得できた以前ならまだしも、メディアのパラダイムシフトが進行し、顧客のブランド離れが懸念される今日、この理屈は、もはや「空論」です。現実の市場では、リピーターであってもファンでない場合があるし、その逆もあることを、生活者ならば誰もが自覚しているからです。このような古いタイプのCRMを運用し続ける企業は、今どきそう多くないと思いますが、もし心当たりがあるならば、仕組をアップデートした方が良いと、僕は思います。

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経験価値で愛着を深める

新築マンションの折り込みチラシを一番熱心に読んでいるのは、実は、直近に新築マンションを購入した顧客である、というのはよく知られている事実です。

顧客は商品購入の前と後の都合2回、その商品について深く考えると言われています。購入前がプロモーション、購入後がCRMの領域です。特に高額な商品購入後の顧客心理は複雑で、欲しかった商品を手に入れたという「達成感」と自分の判断に間違いがないかという「不安感」の間で揺れ動いています。この不安定な心理に適切なコミュニケーションで対応し“判断は正しかった”という確信へ変容させることが出来れば、リピートセルに繋がります。

僕はこうした顧客マネジメントを考える上で「経験価値(experiential marketing)」に改めて注目しています。ご存じの通り、5~6年前に話題になったCRMを補完する概念ですが、僕はソーシャルネットワークの存在感が増した今こそ、この概念を再評価したらどうかと思っています。

「経験価値」とは、モノ・コト・バショに関する経験から感じた価値(=楽しかった、面白かった、快適だった、感動した…など)のことです。プラスの経験価値が大きいほど、対象となるモノ・コト・バショへの愛着は深まり、その経験を誰かに伝えたい欲求が高まる、と言われています。

例えば、楽しい旅行から帰った後、面白い映画を見た後は、その経験を誰かに話したくなるし、また行きたいと思います。それと同じです。顧客マネジメントの観点から解説すると「製品の利用プロセスを通じて、顧客の経験価値を高め、リピートセルとクチコミを促進する」ということになります。

もっと簡単に言えば「製品の利用シーンに介入し魅力を最大限に引き出す」という発想です。アップル社のアップルストアの事例は、この概念の実践モデルとして有名です。

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ちなみに僕が「経験価値(experiential marketing)」を再評価する理由は、これからの顧客育成を考える上で重要な3つの課題(= ①ロイヤルティの向上、②リピートセルの促進、③クチコミの活性化)をワンストップでソリューションする可能性を感じるからです。モノグサな僕にとって、魅力的な理屈と言えます。 (次ページへ続く

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