コラム

企画を通すコツ~オリエンからプレゼンまでの時間の使い方

コミュニケーションミックス考:これからのブランディング

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野菜ソムリエ、という事例

プロモーションの参考になる身近な事例をご紹介しましょう。僕が特に興味を持ったのが「野菜ソムリエ = ベジタブル&フルーツマイスター資格認定制度」です。ちょっと前にメディアでずいぶん取り上げられたので、ご記憶の方もいると思います。

僕は、この民間の資格認定制度を「経験価値マーケティングの成功事例」として高く評価しています。一般的に野菜ソムリエの商品は「資格」だと思われがちですが、実は「野菜や果物などの農産物」です。

そもそもこの資格制度は、国内農産物の需要活性と地域振興を目的に作られた「顧客育成プログラム」という側面を持っています。野菜ソムリエは、掘り起こす余地がないと思われていた「野菜や果物」という身近な商品に対して、多角的な観点(=栄養学、料理学、美容学、マーケティング)から光をあて直し、生活者の新しい経験価値を引き出すことに成功しました。

この資格制度のユニークな点は、その組織運営スタイルにもあります。話題のソーシャルネットワークと同様のスケールフリーネットワークなのです。閉鎖的な家元制度の資格ビジネスと違って、卒業生に資格を自由に活用するメリットが与えられています。このメリットにより、幅広い分野の人々がこの資格を受講し(=主婦、流通関係者、外食関係者、メディア関係者、食品メーカー関係者)、幅広い分野のビジネスで活用されています(=小売店、スーパー、レストラン、出版、料理教室、商品開発)。

協会は、原則として卒業生の活動に直接関与せず、その活動を支援するという立場をとっていて、その結果、野菜ソムリエの影響力とネットワークは、卒業生の自由で主体的な活動をハブとして、まるでアメーバーが自己増殖を繰り返すように自然に拡大したのです。

このように「顧客育成プログラムとしての資格制度」と「スケールフリーな組織運営」という2つの特長を内蔵した「野菜ソムリエ」の成功事例は、これからの顧客育成を考える上で、良いお手本になると思います(⇒下図参照)。

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例えば、香水のソムリエ

試しに「野菜ソムリエ」を参考にした(というよりパクった)僕なりの「経験価値マーケティングのアイデア」を考えてみました。

僕は、化粧品ブランドのプロモーションをお手伝いしているのですが、いつもフレグランス製品の訴求方法を考える度に、困ってしまうことがあります。それは、国内ユーザーのフレグランスに関するリテラシーの低さです。

本場フランスでは、親子三代に渡ってお気に入りのフレグランスメゾンを継承するという文化があって、生活の中に「フレグランスを楽しむ」という習慣が自然に浸透しています。一方、日本国内では、まだまだフレグランスを日常的に楽しむという習慣が普及していません。

例えば、フレグランスの種類(=パヒューム、オーデパルファン、オーデトワレ)、使い方(レイヤード)といった基本的な知識でさえ、トリビアと感じるユーザーが少なくありません。ゆえに、フレグランス製品の魅力をどういう角度から伝えれば響くか、という点でいつも迷ってしまいます。僕はフレグランスをもっと楽しんでもらうためには、先ず、ユーザーの経験価値を高める必要があると思うのです。

そこで野菜ソムリエの成功にあやかって「有名ブランド認定のパヒューマー資格制度」を作ったらどうかと思います。ちょっと前に流行った「検定モノ」の様な軽いノリではなくて、もっと本格的な展開です。受講者には、パヒューマーの知識や調香技術を体験型イベントを通して楽しく学んでもらいつつ、最終的に自作のオリジナルフレグランスを調香できるくらいの技能を身に付けてもらいます。

卒業すれば、ちょっとオシャレな「パヒューマー」の誕生です。フレグランスへの経験価値(≒愛着)を高めた卒業生は、きっとブランドの良き理解者ならびに投資家(=ファン)となってくれるはずです。また、卒業後の活動の場をソーシャルネットワーク上に用意すれば、彼らのクチコミを介して、家族や友人たちもフレグランスに対する新たな関心を持ってくれるかもしれません。

だんだんと市場のフレグランスに対する興味や関心が高まって、みんなが「パヒューマーに憧れる」という様な状況になれば、僕も毎回、悩まなくて済み、たいへん助かるのです(⇒下図参照)。

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上塘 潤一郎「企画を通すコツ~オリエンからプレゼンまでの時間の使い方」バックナンバー

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