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コラム

ガイシの夜明け

“ガイシ”でもがいた9年間。

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はじめに

どうも。三つの寺でミツデラです。クールなイメージのガイシ(外資)で働いていますが、このタイトルのようにダジャレとかベタとか、ドメ(日本)っぽい作風を得意としています。「ガイシの夜明け」。このタイトルに、僕は2つの意図を込めました。ひとつは、深く知られていないガイシ系(外資)代理店のスタイルや特徴を明らかにしたいということ。もうひとつは、広告キャンペーンがメディアやセクションの枠を超えホリスティック思考になってきた今、ブランドチーム制やフィー制を敷いているガイシが広告業界の光となるかもしれないということ。

日本において、ガイシ系広告代理店は閉鎖的なこともあり、偏ったイメージを持たれがちです。確かにロジカルなアプローチや効率論、攻めるよりも守っていく姿勢、一業種一社制度など、独特なガイシの視点は存在します。しかし今はそれだけではありません。ここ数年の広告の変化と共に、ガイシの仕事の捉え方やスタンスは変わってきています。人数が少ない分、大手国内代理店より先に変わり始めている部分もあります。ドメ育ちの僕が、未だここにいるのがその証拠です。

僕のガイシ9年間には、大きく3つの時代がありました。新しい環境にワクワクしていた「天国時代」、やることなすことガイシ文化が壁となった「衝突時代」、結局は自力で変えていこうと決めた「格闘時代」。このコラムでは、僕が過ごしてきた環境をなるべくリアルにお伝えするとともに、日々変化を遂げているガイシの今をお届けしていきたいと思います。まずは、3週にわたり、僕が経験してきた3つの時代を振り返ってみます。

すべてが新しく幸せに思えた「天国時代」

クリエイティブのアイデアこそ売り物である。当時ガイシが提唱していた「クリエイティブエージェンシー」というスタイルと響きに惹かれ、6年間勤めてきた環境を離れました。ガイシの中でもビーコンは、電通、レオ・バーネット、ダーシーという3つの会社から生まれたばかり。外資系ブランドだけでなく、アイフルやライフカード、家庭教師のトライなど、国内でも目立つようなキャンペーンを打ち出していました。英語はできないし興味もない、国内メーカーのテレビCMばかり手がけていた僕にとって、まさにビーコンは運命の場所だと思いました。

ガイシのクリエイティブにはCMプランナーという職種はなく、アートディレクターかコピーライターどちらかの肩書きを選択しなくてはならない。僕はアートディレクターを選びました。表向きにはビジュアルから発想するタイプなので、などと言いましたが、本音は最新のMacがもらえるのと、何となくモテそうだから(すいません)。でも後にアートディレクターは高いMacスキルを持ち、すべてのビジュアルを自分の手で作っていることを知り、コピーライターを募集しているプロジェクトに飛び込んで転身しました。「アートからコピーへ」というありえない人事発令は前代未聞、今でも一部の社員の中で伝説となっています(笑)。

さて、肝心の仕事はというと、すごく充実していました。クリエイティブエージェンシーだけあって、企画を大切にするし、その企画者も大事にされる。しかも少人数で完全内制なので、企画表現は任され、社外の人が入ることもない。大勢の先輩や外部スタッフが企画を出していた前社のやり方に比べ、ここでは自分が考えたアイデアをプレゼンでき、さらには制作できる。もうサイコー!こんな幸せなことがあっていいのか!そう興奮していたのを覚えています。ちなみに今でもこのやり方は変わっていませんが、ちょっと当たり前の感覚になっていました。いかん、もっと日々幸せを噛み締めねば…自戒です。

というわけで入社後、外資系ファーストフードの仕事をガッツリ担当し日々楽しく企画していたのですが、一年ほど経ったころ、ふと我に返りました。あれ?他のクライアントの仕事をやってないぞ。ガイシは一業種一社制。ブランドを大切にし、クライアントと共に成長していくというスタンスからあまり多くのクライアントを抱えません。しかも、チームに入ったら何年もそのブランドだけを担当するという風習。前社では、常に製菓から住宅まで幅広いクライアントがあり、新しい商品や業界に出会うたび、ワクワクしながら仕事をしていたので、何だか物足りなく感じたのです。同じブランドのことだけを徹底的に考える、それもひとつのスタイルですが、僕のようなアレもコレもやりたい!という欲の固まりのような人間にはちょっと窮屈だったし、せっかく代理と名のつく立場にいるわけなので、いろんな会社の代理をしてみたいと思ったわけです。

そこで、当時ビーコンになかった製菓という業種の開拓を企み、前社で担当していたクライントさんに連絡し、自主提案を敢行しました。僕の「勝手に自主プレ」のルーツはここにあります。そして、幸せなことに新商品のテレビCMを制作させていただききました。関係者のみなさま、その節は、ありがとうございました。

LEOSIGHT

全レオ・バーネットの優秀作が紹介されるインナー誌「LEOSIGHT」。違和感がハンパなかった。

ビーコン初の製菓会社を獲得!しかもガイシっぽくないおバカな企画が世の中に流れる!ああ、死んでもいい。僕はまたもや幸せの絶頂にいました。でも、ここはガイシ。フィー制度で成り立つガイシ。クライアントさんから毎月フィーをいただきサービスをするというスタイル。広告制作のマージンだけでは会社が求める利益に届かず、せっかくの開拓も敢えなく単発で終わってしまったのです。ガイシ歴の浅い僕には対抗する策も権力もなく、黙って受け入れざるをえなかった。もったいないことをしました。余談ですが、黙って自主プレし、テレビCMを制作したことが前の会社の大先輩の逆鱗に触れ、この後2年間、口を聞いてもらえませんでした。先輩、その節は、申し訳ございませんでした。

良くも悪くもこの体験をきっかけに、攻めては潰される「衝突時代」へと突入していくのです。