(左から)サイモン・グレイさん、佐藤栄次さん、山口秀夫さん
今回はカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)TSUTAYA カンパニー 商品本部でコミュニケーション企画を担当する山口秀夫さん、佐藤栄次さん、サイモン・グレイさんに、TSUTAYAを中心としたソーシャルメディア運用の取り組みをうかがいました。
「ソーシャルメディアは二の次」から体制一新
――始めにソーシャルメディアに取り組んだきっかけを教えてください。
佐藤 最初はブログですね。本部のマーチャンダイジング担当が運営するブログや店舗ごとのブログなどを2009年に開設し、そのあと少し間があいて2010年頃にツイッターとフェイスブックのアカウントを開設しました。
――最初にブログを始めた理由は。
佐藤 商品の告知やTSUTAYAならではのオリジナル特典の紹介など、情報発信ツールとしての使い方が中心でしたね。直営のTSUTAYA店舗ではアイドルの握手会などイベントも開催していますし、六本木にはインストアライブ用のイベントスペースもあります。そうしたTSUTAYAの情報を発信していました。ブログはアメブロを使っていたのですが、当時はアメブロと店舗ブログを定期的に増やそうと活動していましたね。
――ブログは主に情報発信とのことですが、その後ツイッターやフェイスブックを始められたきっかけは。
佐藤 ツイッターもフェイスブックも2010年頃にアカウントを作っていたのですが、専任の部署があったわけではなく、フェイスブックのアカウントなどは人事担当が採用活動を目的に立ち上げた、というのが実際のところです。
山口 ただ、立ち上げたのはいいものの、採用が目的だったので、アカウントの運用は続かず放っておかれた状態になっていたのを、TSUTAYA onlineの担当が引き受けて1人でツイッター、フェイスブックともに運用を開始しました。その後今年の4月になって我々が運用をさらに引き継いだ、という流れです。
佐藤 ツイッターの当時の担当者はソーシャルメディアを使い慣れていたようで、TSUTAYAというブランドの効果もあってか、特にプロモーションもせずに2万人近いフォロワーを集めていました。ただ、1人での運用はなかなか手が回っていないという状況だったようです。そのため、今回よりソーシャルメディアやエンゲージメントに力を入れるための部署編成に合わせ、我々の部署でソーシャルメディアの運用を引き継ぎ、本格的に担当することになりました。
――本格運用するようになった狙いはどこにあったのでしょうか。
山口 ソーシャルメディアは「やらなければいけない」という意識は肌で感じてはいました。ただ、我々にはTSUTAYA onlineという1つの成功事例があったのでどうしてもTSUTAYA onlineメインで考えてしまいソーシャルメディアは二の次というのが実情だったのですが、時代の流れが人々のコミュニケーションに移るのを見ていて「これはしっかりやらなければいけない」と、昨年体制を一新しました。
インターネットの世界ではAmebaやmixiなど、一世風靡したプラットフォームが数年単位で移り変わっていきます。ヤフーやグーグル、ツイッター、フェイスブックもしかりです。そうした時代の中で、TSUTAYA onlineをその時々で流行したプラットフォームに合わせていこうとするとどうしても無理がでて、サービスもつぎはぎになってしまうし、お客さまにも使いにくいものになってしまう。それよりはソーシャルメディアそのものを自ら運用することで世の中の流れに対応していこうと考えました。
フォロワーから「中の人変わりました?」
――開始直後はどのような運用をされていたのでしょうか。
山口 引き継いだ直後はまだあまりコストもかけられなかったので、まずは外部の情報を集めたり、他の企業のアカウントを参考にしながらガイドラインや運用ルールを決め、本格的に運用をし始めたのが今年の4月のことです。
佐藤 アカウントを引き継ぐ直前に、東日本の店舗で旧作のDVDレンタル料金100円という施策を開始していたので、このタイミングでこのニュースを拡散できないか、ということは考えていました。この100円レンタルが始まったことを認知して欲しい、という思いで、「#好きな映画頼んでTLをTSUTAYAにする」というハッシュタグをつけてツイートしたところ、大変な反響をいただき、ハッシュタグがツイッターのトレンド入りを果たしました。同じタイミングでツイッターの広告を出稿したこともあって、フォロワーも大きく伸ばすことができました。
佐藤 前任者も順調にフォロワーを伸ばしていましたが、2万人を超えて伸び悩みが見えていたところに、100円というニュースと出稿を組み合わせることでユーザーへも大きくアプローチできました。ソーシャルメディアとTSUTAYAは非常に親和性があり、コミュニケーションツールとしての可能性を感じましたね。
――実際の運用はどなたが行われているのでしょうか。
佐藤 ツイッターの運営は私が担当していて、1日3回程度のツイートを基本にしています。内容はあらかじめ原稿みたいなものを用意しつつ、その日に起こっている話題やトレンドに入っている話題などをチェックしつつ、「ゆるい」空気を意識していますね。
以前までのアカウントは商品情報の提供が中心だったのですが、ニッセンさんのような親しみが持てるようなアカウントにしたい、情報発信ばかりでなくてフォロワーからもレスポンスが来る、そういう愛されているブランドにしたいなと思って運用していました。実際、2週間ほど経つと「中の人変わりました?」とか、「最近TSUTAYAのアカウントが面白いぞ」と言ってもらえるようになり、大変嬉しく感じましたね。
――担当を代わられたばかりで非常にうまく運用されているようですが、それまでソーシャルメディアの経験はあったのでしょうか。
佐藤 個人でブログはやっていたので多少の温度感みたいなものはつかんではいましたが、企業として情報発信するのはまた別ですね。企業を代表しての発言になるので真摯に対応する必要がありますし、1つの発言で機嫌を損ねられてしまう可能性もあります。最初の頃は「ここまでくだけていいのかな?」と塩梅に苦労しました。
(次ページへ続く)
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