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紛争鉱物をなくすために努力している企業ランキング

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「紛争鉱物」という言葉を聞いたことがあるだろうか。コンゴ民主共和国および周辺地域における紛争地域で産出された鉱物であり、主にスズ・タンタル・タングステン・金の4つを指す。スズは、はんだ、メッキ材、集積回路・基板、キャパシタ電極などに、タンタルは、携帯電話やデジタルカメラ、ゲーム機器などの電子部品など、タングステンは、携帯電話などの電子部品、超硬工具、集積回路などに、金は電子部品の配線材料、メッキ材、航空機用解凍液、宝飾品などに使用される。

いずれもエレクトロニクス産業や医療機器、省エネ関連などさまざまな分野で欠かせない鉱物だ。米国で、紛争鉱物の使用を報告する制度(2010年成立、米国金融規制価格法=ドッド・フランク法)が始まるため、昨年から大手各社はサプライチェーンへの調査を進めている。昨年12月には、パナソニックが2013年7月に調達先1万社を対象に調査を実施することが報じられた。

過去10年で金の価格は5倍以上に伸びており、ロンドン市場の取引価格は332.61米ドル(2002年12月)から1,688.58米ドル(2012年12月)となっている。金は、エレクトロニクス産業や右肩上がりの需要に伴って、価格が上昇。それにともなって、紛争地域から違法な鉱物が出回り、武装勢力の資金源になるリスクも高まっている。

コンゴの内戦は15年間に及び、第2次世界大戦以降、最も多数の命を奪った紛争となっている。国連などの報告によると、紛争の要因のひとつは、武装グループが鉱物資源の違法開発により資金を調達していることにあるため、米国金融規制価格法(ドッド・フランク法)では、米国に上場している製造企業に対し、その製品に使用する上記4種のいわゆる「紛争鉱物」について、原産国の確認を求める条項を加えられた。紛争鉱物が中央アフリカ産であった場合、企業はそれが紛争資金源とは無関係であることを立証しなければならない。

一方、世界の金鉱山会社で構成されているワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)は、ドッド・フランク法に対して、「該当地域で責任を持って産出された鉱物の事実上の禁輸措置につながる」と懸念を表明している。紛争資金源とは無関係であることを立証するのが難しい場合、合法な採掘事業者が不利益を被り、生計手段を失うことで、社会の緊張が高まる可能性があるというのだ。

そこで、WGCでは2012年10月「紛争フリー金スタンダード(Conflict-Free Gold Standard)」を発行し、企業に対して導入を進めている。開発には5大陸にまたがる政府、国際協会、NGO、大学、そしてサプライチェーン企業が関わり、現場でのストレステストも行われた。このスタンダードは、経済協力開発機構(OECD)の、国際的に認められたベンチマークをベースにしているという。

このスタンダードを導入する企業には、外部の保証機関による精査を受けた公的報告によって、適合状況を公表することが求められる。この情報は、精錬会社などのサプライチェーン企業に提供されるると同時に、さらに川下のユーザーにも提供される。

電子業界CSRアライアンス(EICC)とグローバル・eサステナビリティ・イニシアティブ(GeSI)が開発した「紛争フリー製錬所プログラム」のほか、「ロンドン地金市場協会」や「責任あるジュエリー協議会」でも類似のプログラムが開発されており、これらの組織は、お互いのアプローチを認め、「監査疲労」や付随するコストの軽減を目指しているという。WGCではこうした活動を通じて金の採掘によって、合法な事業者が合法な利益を得られるように、今後も産業界や国際社会に対して働きかけていく方針だ。

これに対して、米国の有力シンクタンクである「センター・フォー・アメリカン・プログレス(CAP)」では「イナフ(Enough)」というプロジェクトでユーザー側から川下メーカーの取組みを評価する「Taking Conflict Out of Consumer Gadgets」を発表し、啓発に努めている。この報告では、トレーサビリティ、第三者の監査、認証の3つの観点から、企業が紛争鉱物を使用しないように努力しているかどうか、その進歩の度合を評価している。そのランキングは次の通り。報告書では、Intel、Motorola Solutions、HP、Appleらの取組みの進歩を高く評価する一方、任天堂はサプライチェーンにおけるトレーサビリティの取組みがみられないとしている。

 Intel 60%
 HP 54%
 SanDisk 48%
 Phillips 48%
 AMD 44%
 RIM 42%
 Acer 40%
 Dell 40%
 Apple 38%
 Microsoft 38%
 Motorola Mobility 35%
 Nokia 35%
 Panasonic 33%
 IBM 27%
 Sony 27%
 LG 27%
 Samsung 27%
 Toshiba 21%
 Lenovo 17%
 Canon 8%
 Nikon 8%
 Sharp 8%
 HTC 4%
 Nintendo 0%

「紛争フリー金スタンダード」は、World Gold CouncilのWEBサイトで入手できる。

「紛争フリー金スタンダード」を紹介する動画サイトはこちら

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