加藤 尚武 京都大学名誉教授
表に「環境問題」と書かれたカードを裏返しにすると、裏には「資源問題」と書いてある。表には、「国際協力」、「未来世代への責任」、「自然保護」と明るい文字で書いてあるのに、裏には「国民国家」、「地政学的関係」、「資源ナショナリズム」と書いてある。「地政」はGeopolitik(地+政治)の訳語であり、悪名高いナチズムの基礎理論であった。国家は、それを拘束するいかなるより上位の機関も存在しない至上権である。殺人も侵略も国家固有の権限である。地図上にあるすべてのものは、国家の視野から見れば、侵略、占有、植民地化という文脈のなかにある。大陸棚の資源利用という観点からすれば尖閣列島が大陸に帰属することは地政学的真理であろう。
中国にとっての資源問題
図1は、エネルギー白書2012に掲載されている世界の「一人あたりエネルギー消費量」の現状図である。
世界全体でみると、一人あたり石油換算エネルギー消費が、8トンの地域、4トンの地域、1トンの地域というように分かれている。この高、中、低の構造がなぜ発生しているかは、謎である。高と中の間の地域があっても、いいはずだということは言えるが、実状は、非連続的な段階構造になっている。
