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コラム

いいかげん、脱・広告宣言!

コンテンツマーケティングは自転車のように乗りこなそう!

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もうひとつ事例を挙げましょう。
昨年、ビスケットのオレオが実施した「停電ツイート」というものが話題になりました。
昨年のアメリカンフットボールの決勝戦であるスーパーボウルで、試合中に停電が起きたのです。
オレオはそのわずかな時間に、停電をネタにしたグラフィックを制作してツイッターに投稿しました。
メッセージは、「YOU CAN STILL DUNK IN THE DARK(暗闇ですがオレオのミルク浸けをどうぞ)」というもの。
見事なリアクションを表現したこの投稿は、多くの人々の共感を呼び、広くシェアされていきました。
しかし想像すればわかるように、これは簡単にできる技ではありません。
こういった場面ですかさず反応するには、相当な慣れが必要なはずです。

実はオレオは、これ以前に「OREO DAILY TWIST」という施策を経験していました。
これは、オレオビスケットの誕生100周年を記念して、毎日時事ネタ特製ビスケットを作って、100日間連続で発表していくというものです。
おそらく、ものすごく大変なチャレンジだったでしょう。
しかしオレオは、ここで場数を踏んだわけです。
「停電ツイート」はアウトプットこそシンプルですが、こういった試運転(といったら怒られるかもですが)があってこそ実現した、ウルトラ高度なコンテンツなのです。

こう見ると、コンテンツマーケティングの実践は、企業をひとりの人間のようにとらえ、どうやって人々が集まるように育てていくかというチャレンジです。
さまざまなコンテンツを日常的に運営し、「らしさ」を持った語り口(トーン・オブ・ボイス)を定め、魅力的な人格を形成していくということです。

繰り返しになりますが、この感覚は自分自身でコンテンツを制作し、運営してみないとわからないでしょう。
ノウハウ本や解説本も出ていますが、本を読んで理解する類いのものではないのかもしれません。
初めて自転車を乗りこなしたときのように、何度も転びながら運転感覚を身につけていくしかないのだと思います。

京井良彦
電通 マーケティング・デザイン・センター プランニング・ディレクター
大手銀行でM&Aアドバイザーを経て、2001年電通入社。主に、グローバルブランドやITサービス、スタートアップ企業を担当し、ソーシャルメディア・デジタル領域を中心とするエンゲージメント・プランニングや、データサイエンスに基づくグロースハックを手がける。カンヌ国際クリエイティビティ・フェスティバルに毎年参加している。著書に『ロングエンゲージメント』(あさ出版)、『つなげる広告』(アスキー新書)など。東京都市大学非常勤講師。