ソーシャルグッドもまだまだ続く
前記の企業メッセージにも「世界を、社会をよくする企業」としてのメッセージがあり、そこに生活者が「いいね!」と言っているわけで、いわゆる「ソーシャルグッド」への傾倒と言えるかも知れない。
一方で、誰もが「それはひどいね」と思う社会課題に対して、解決策を提示するのが「ソーシャルグッド」系の王道で、今年もそのエントリーは数多く見られた。トレンドを捉えてのエントリー数の増加かも知れないが、私の印象では、おおよそ3割ぐらいはそのあたりの文言が資料に盛り込まれていたような気がする。
中身は、大きくは政治的な話であったり、また日常生活における細かな不具合であったりを解決しようとするもの。誰もがそこに「ノー」とは言えない雰囲気があるが、さらにその解決策にひとヒネリ効いているものがやはり評価されている。
インターネット法によって、許可のないニュースは最大4時間で削除しなければならないことを逆手に4時間で自動的にニュースが消えていく仕組みとした「The fading news」、小児性愛者摘発のためのフルCG少女を使った「Sweetie」(※これは、Grand Prix for Goodを受賞)など。先に触れたサイバー的な技術が盛り込まれたものがゴールドに残ったようだ。
PR領域でのクリエイティブの融合
そして最後が、PRキャンペーンにクリエイティブが融合した各種エントリー。
私がPRカテゴリの審査員をした2年前に審査委員長だったWeber Shandwickのゲイル・ハイマンは、PR会社がグランプリを獲れないことについて「我々もより生活者を魅了するような、クリエイティブをも包含したキャンペーンを仕掛けるべき」と言っていた。
まさに今年はそれが実現している年で、今年のPRライオンズの審査員長を務めた大手PR会社MSL GROUPのRenee Wilsonも「The scarecrow(かかし)」およびグランプリで接戦となったVOLVOの「Live Test Series」はいずれもインテグレテッドキャンペーンであったと言及している。
チポートレは、PR会社とクリエイティブブティックが、アカデミーショーを受賞したアニメーション制作スタジオと組んだキャンペーンとなっているし、Honey Maid社の「This is wholesome(これは健全だ)」では、米大手PR会社Weber Shandwickが、ショッキングな広告に対する“嫌悪感”を“愛”に変えるというアイデアを、これまた破竹の勢いのクリエイティブエージェンシー、Droga5とガッツリ組んで実現した。
ちなみに、VOLVOはどうなのよ?と言われそうだが、ここにも実はVolvo trucks public relationsというハウスエージェンシーがきっちり入ってやっていることを共有しておきたい。
これらの状況を鑑みるに、今後益々、PR領域でのクリエイティブの活用事例が増えると共に、またクリエイティブ・パーソンにおけるPRの有効活用の模索にも拍車がかかるに違いないだろう。
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