森永真弓さんに聞きに行く「自分で手を動かす人の仕事術」(前編)

share

廣田:ウェブデザイナーからインタラクティブプランナーになってプロモーションの仕事を経て、次は研究職になったわけですね。

森永:はい。ブログが出てきてグーグルが検索にソーシャルが影響をあたえることを予測してレンタルブログサービスの「ブロガー(Blogger)」を買ったり、という変化が起きてきていて、やっぱりインターネットやソーシャルの世界は面白いよねと思って個人的に掘り下げ続けていました。

そのうちに、今度はメディアに関わる業務に領域が広がり始めたので、手を挙げて博報堂DYメディアパートナーズへ出向しました。

そのあとは、CGM(Consumer Generated Media)、今はソーシャルメディアと呼ばれるものを何となく芯にして、クライアントの案件を形にしたり、雑誌社やテレビ局と仕事をしたり、研究開発やツールの開発、ユーザー調査をしているといった感じです。

廣田周作(電通)

廣田:僕も理系出身で、東大の機械工学科というところでアリの研究をしていたんですけど、限界を感じて文系にシフトしようとNHKでディレクターをやっていました。でも、そこでもやっぱり限界を感じて、CMプランナーになろうと電通に入りました。でも、理系出身だったので「おまえはビッグデータをやれ」みたいなことになって。

森永:理系出身って、ときどきそういうワナがありますよね(笑)。

廣田:はい。全然興味ないのに、理系っぽい分野に任命されるっていう。僕はそこからデジタルの方へどっぷり入っていくことになったんですけど、森永さんはインターネットというやりたいことがあって、そこに関連する領域をいろいろ横断して経験されていて面白いですね。

でも、今は、インターネットしか詳しくない人だと意外に活躍しにくい気がします。何にでもインターネットって関係するので、他に何か詳しいことがあった方がそこで面白い仕事ができる。

個人の活動が仕事に幅を持たせる

森永:私は、いろんな異動や職種を経験してきましたが、選択肢を出された時に手を伸ばさないこともできたんです。広告業界って1つの軸を極めて旗を立てた人を高く評価しますし。現に異動するたびに「また変わるの?方向定まらなくてかわいそうだね」って心配されたことも数々あるんです。

ただでも結局、いろいろな部署から声をかけていただいて、いろいろなところをホイホイ動いて、いろいろ経験した上での今はラッキーの積み重ねだったと思っています。

廣田:あらゆるものがデジタル化していく状況で、縦割りの考え方でネットだけっていうのは無理な話です。セールスプロモーションの現場でも、ECサイトでも、ブランディングの場面でもネットと関わりがあるので、いろいろな領域を雑食的に経験している方がプランニングに幅が出るということもありますね。

森永:大学時代にホームページを作っていて、当時はそういう学生が珍しかったので、いろいろな会社でアルバイトをさせてもらい、そのときの人脈や技術が生きているというのはありますね。

廣田:ネットって当時は、やっている人が限られていて、やっている人同士がすぐに、割と組織の壁を越えて仲良くなったりっていう文化があったかなと思います。

森永:インターネット黎明期は個人向けの安いレンタルサーバー屋さんもなく、大学の友達グループでサーバーを借りて、そこを間借りしてホームページの運営をしていました。そのうち個人向けレンタルサーバーができ、日記サイトができ、ブログができ、SNSが…というふうにどんどん情報発信が楽になっていきました。

そういう次々に出てくるサービスに登録しまくることが楽しい、みたいなテンションが私にありまして…。大学時代のあだ名が「こえだ」なんですけど、あ、あのお菓子の小枝です。苗字が森永なので。新しいサービスが立ち上がるたびにとりあえず「koeda」でIDを取りに行くことが使命のような心持ちなんですよ。

ブログサービスとか一体いくつ登録したことか、みたいな…で、取れるとうれしくて「○○サービスでkoedaゲット!ぐへへ…」とかネットに書いちゃう。そうすると同様の感覚の持ち主である知人の鈴木さんがライバルの多い「僕もsuzuki取れました!」と知らせてくれて、そういう連絡がうれしいわけです

…って、今明らかにこの取材の場で皆さん引いてますね、気持ち悪くてすみません。でもこういうギークというかなんというかネットジャンキー特有の気持ち悪さも含めて私なので(笑)。

廣田:メジャーな大企業がインターネットに取り組むことになったとき、その個人として取り組んできた“ちょっと気持ち悪い部分”が生きるようになってきたということもあるのではないですか? 僕も個人的な、けっこう気持ち悪い活動で築いてきた人脈が仕事で生きることが多くなったと感じています。

森永さんは、個人的にツイッターで情報発信されていますが、仕事と個人活動の結びつきについてどのように考えていますか。

森永:そういう意味で、一番仕事に近いのはネット上で発信している人同士のつながりがあります。クライアント同士のつながりで「どこどこの代理店が使えねぇ」なんて愚痴が飛び交っている大変恐ろしい場にも仲間として入れてもらえたり。SNS内の秘密のグループのこともあるし、リアルで飲み屋でということもありますね。

廣田:そういうところに僕と森永さんだけが入っているという事案も発生していたり(汗)。

森永:そうそう(笑)。業界の上の年代の方はそういう交ざり合いを見て驚かれる事が多いですよね。世代が近くてネットの使い方やスタンスが似たもの同士の感覚で、分かり合える仲間だと思ってもらえていて、声をかけてもらえるのは良いことだと思います。

ときどき、自分以外全員クライアントだったりして、あまりのアウェー感に、冷や汗が出ることもあります。

次ページ 「納品文化から、クライアントと一緒に作る「協働」へ」

Follow Us