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森永真弓さんに聞きに行く「自分で手を動かす人の仕事術」(前編)

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納品文化から、クライアントと一緒に作る「協働」へ

廣田:世代論はしたくないんですが、ちょっと上の世代の人たちは、マーケティングの手法というものは絶対に外に漏らしてはいけないっていう考え方の人がいます。僕は、シェアできる部分はした方が情報が集まってくるという感覚です。守秘義務は当然守りながら、企画書や考え方をシェアすることで仕事が増えていくという感じです。

改まって、大人数でご提案さしあげます、みたいな今までの仕事の作り方から、個人的なつながりが仕事を生むように変わってきていると思います。

森永:世代というか、時代なのかもしれませんが、これまでの広告の仕事って「納品文化」だと私は捉えています。クライアント向けに完璧にカスタマイズされた極上の完成品を納品し、求められるのは完成品のクオリティーなんです。

で、究極と至高の対決じゃないですけど(笑)、各広告会社の完成品には違いがあって、それがクライアント側の選択ポイントだったと思います。

最近は、まず世間一般共通のベータ版みたいなものがあって、その上に乗ってクライアントと一緒にその会社らしさを加えたり、少しずつ変えながら完成品にしていく、というよりは永遠に育て続けるという方が感覚に近いかもしれません。

そして育てていく中で生まれた手法やデータなどの知見の中で、みんな共通認識として持っていた方が便利だなと思うものがあれば、「差別化項目」として囲い込まずに、外部にも共有してしまう。

そうやって内部で知見をためつつ外部と情報交換しながら業界全体で伸びていき、さらにその上でクライアントの案件をより良くしていくという感覚もセットですかね。

こういう仕事のやり方は、納品文化の人からは非難…というか、分かり合えないままにらみ合いになったりしますけど。「納品するまでがお仕事」の人からすると、「納品してからの運用がお仕事です」の人って初期で手を抜いているように見えているんですよね、多分。

でもそうではなくて、最終的に最高のものにするために、初期段階でいじりすぎたり固めすぎたりせず、柔軟に状況に応じて方向転換できる状況と体制の提案なんです、ってことなんだけどなぁと…むつかしいですね。

廣田:分かります。企画書は作り込んでいきますけど、提案のときにはホワイトボードにいろいろ書きながらクライアントさんと一緒にその場で作り上げていくことは増えています。クライアントの会社の中と、広告会社というふうな線引きがしにくい仕事が増えている気がします。

データの共有や、クライアントの社内体制が変わるタイミングに一緒に入って組織改変を手伝うとか、こういうのは「納品文化」に対して何て言うんでしょう。

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