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コラム

CSR視点で広報を考える

デング熱が東アジアで大変なことになっている

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国内感染発表から約40日、封じ込めは成功したか

デング熱は、厚生労働省が今年8月27日に戦後初めての国内感染の発表を行って以来、10月6日までに、17都道府県、155人の感染者を確認している。

代々木公園で始まったデング熱感染は、新宿中央公園、明治神宮外苑、外堀公園などに感染源が移ったことで、東京都を中心に広く拡散するかに見えたが、その後、厚生労働省、国立感染症センター、東京都の徹底した蚊の駆除対策で、感染者が激減し、現在は小康状態となり、ほぼ封じ込めに成功している。

蚊の活発な活動時期が10月末頃までとの一般的な情報から、国内の年末までの期間、さらに年越えの時期を含めても、今後、急激な感染者の増加があるとは想定しづらい。

デング熱は、ここ10年間では海外から帰国した日本人男性1人がデング熱によるショック症候群に真菌感染症を合併し亡くなった事例以外には死亡例は確認されていない。

デング熱は、高熱という症状はあるが、適切な医療措置がなされれば比較的安定した状態を保つことが一般的で、国、自治体、専門機関が手を取り合い対応すれば、感染者を保護しやすく、事態の封じ込めは可能であるとの証明を裏付けることになった。

感染を封じ込めたのは国民の危機管理能力の高さ

厚生労働省は、医師がデング熱と診断した場合に、速やかに自治体の長に届け出ることと同時に、自治体には、患者が発生した所から半径300メートルの範囲内は、蚊の発生を極力予防するための適切な対策を講じるよう徹底した。

一方、マスコミが「デング熱」という感染症の存在を広め、症状が出た場合の医療機関への速やかな治療を呼びかけたことで、国民の危機管理意識が醸成され、早期発見につながったと思われる。

国や行政、専門機関のみならず、マスコミや国民自らが積極的に動いて、感染者の保護と媒介蚊の発生抑止に成功した好事例であると考える。

東アジアで爆発的に感染が広がるデング熱

かつて、このコラムで紹介した、SARS感染爆心地であった中国広東省が今、大変なことになっている。広東省当局によると、デング熱感染が爆発的に拡大し、5日0時時点で累計2万132人の感染数に達している。特に10月に入ってからの感染事例が多く、4日までに5032人が新たに感染し、一日平均1258人の発症が確認されている。

中国ではデング熱の感染が毎年確認されてきたが、全国全ての地域を合わせても、2011年には120人、2012年が575人、2013年が4663人であったことを考えると、今年の広東省を中心に猛烈に発症しているデング熱感染者数は、異常というしかない。

一方、台湾でも猛烈なデング熱感染が確認されている。年初から9月24日までの感染者数が発表されたが、累計で約2800人に達しており、そのうちの90%以上を占める2610人が高雄市に集中している。人口比率当たりの感染率では、中国1に対して台湾が約1.6倍であり、大きく中国を上回っていて、より深刻な流行と言える。現在、感染が確認されていないのは、金門県や蓮江県で、いずれも離島のためと考えられている。

感染拡大の封じ込めに対して、日本と中国あるいは台湾との意識レベルや危機管理体制には大きな違いがあったものと思われる。中国や台湾がこの時期においてもデング熱感染拡大が継続している状況を考えると、来年以降においても引き続き、デング熱感染が止まらない可能性が高く、封じ込めには3年以上かかることも想定され、経済に与える影響も心配される。

同時に、深刻な課題としては、これがエボラ出血熱であったらどうなっていただろうか、という懸念だ。多くの専門家が人の出入りが激しい中国において、東南アジア地域の最初の感染が確認されるのではないかとの危惧がある。

国や行政当局の情報分析・管理の甘さ、コントロールの不徹底などが次々に露見している中国政府の感染症対策について、今後も重大な中国リスクとして監視することが不可欠だ。


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