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商品訴求と企業ブランディングで進める大麦市場活性化

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ヴァンフォーレ甲府に教わったこと

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大麦を全面に打ち出した戦略で「もち麦ごはん」「おいしさ味わう十六穀ごはん」などの商品ブランドが広く認知されるようになったはくばく。

「大麦や雑穀の美味しさ、健康効能は伝わり始めたが、『はくばく』はまだまだ伝わっていない」と長澤氏。次の課題は自社の企業ブランディングだと考えている。

「企業が情報発信するうえで重要なことは、まず企業ブランディングの核になるものを確定することです」。はくばくでは2006年に、企業理念、ビジュアルアイデンティティ、コーポレートデザインを刷新した。

「穀物の価値を創造して健康と豊かな食生活を実現する」を新たな企業理念に据え、核となるコンセプト「The Kokumotsu Company」を打ち出した。「これをブランディングの核として、この核からブレないように、穀物が食生活を豊かにすることを発信してきました」と話す長澤氏は、自身のブログでも企業の姿勢を明確に伝えるコミュニケーションを展開している。

「今の日本では、『その会社が社会にとっていい会社であるかどうか』ということが企業の価値として強く意識されます。ですからブログでは、商品の良さではなく、当社が社会とどのように向き合っている会社なのかをきちんと伝えていくことが重要だと考えています」。

長澤氏にそのことを気づかせたのは、「2000年に、ひょんなことからJリーグの地元チーム・ヴァンフォーレ甲府を支援することになったこと」だという。

はくばくは、当時経営危機に陥っていたヴァンフォーレ甲府の公式スポンサーとなった。ユニフォームの胸に社名を入れる「胸スポンサー」だ。

それを機に、山梨県内でのはくばくの存在価値は大きく変わった。多くの県民から「はくばくがヴァンフォーレを助けた」と捉えられ、「はくばくを応援しよう」という機運が生まれたという。

「そんな効果が得られるとは夢にも思っていませんでした。狙ってやったことではなかったから、良かったのだと思います。当社はこういう会社だと理解してもらうことが、結果的に企業力の強化につながるのだということをヴァンフォーレに教えてもらいました」。

はくばくでは、Jリーグの開幕前とシーズンの最終日の翌日の年2回、ヴァンフォーレ甲府への応援メッセージを載せた新聞広告を出稿する。特にシーズンの結果が出た最終日翌日の広告には、「はくばくは、今シーズンをこう捉えた」というメッセージを載せる。

「このメッセージは、かなり気合いを入れて考えているので大きな反響があります。ブランディング効果としては、県内に留まっていますが」。こうしたはくばくの応援メッセージは、SNS上で広がり、他チームのサポーターの間でも「熱い広告」として話題になっている。

「穀物が身近にある世界」をつくる

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2015年に機能性表示の規制が緩和されることもあり、大麦市場は今後、競争の激化が予想される。

「いつでもどこでも大麦や雑穀が食べられる世界」を目指してきたはくばくでは、市場の活性化を喜ばしいことと捉えている。「1社だけでは我々が目指す世界をつくることはできません。これからはネットワークを使ったコラボレーションが鍵になります」。コンビニ弁当やおにぎり、冷凍食品、朝食のパンなど、「穀物に関わる様々なジャンルの関連企業と共に、大麦や雑穀を使った商品開発をしていきたい」。

その一方で、「より一層はくばくの企業ブランディングが重要になる」と長澤氏は身を引き締める。

「すぐ料理に使用できる『ゆで大麦』といった、簡便性を高めたチルド製品などを開発して、『はくばくの穀物商品は便利で美味しい』というブランドイメージを確立していく必要があります」。

穀物市場で「The Kokumotsu Company」としてのはくばくの存在感が大きくなっていけば、商品開発で同社とコラボレーションする相手企業にも大きなメリットとなるはず。「そこまで定着すれば、世界でビジネスを展開することも視野に入ってくると思うんです」。

世界では、日本の食文化が健康的で美味しいという認識が定着してきている。「日本食文化の本質は、古くから日本人が穀物を中心に食べてきたということにあります」。

雑穀を食べることを日本の文化として世界に発信したい。「はくばく」を日本で食べられている穀物の代名詞のようなブランドとして定着させたい。

「The Kokumotsu Company」。この英語表記のコンセプトには「日本食と一緒にはくばくの大麦や雑穀を世界に広める」という長澤氏の願いが込められている。

長澤重俊(はくばく 代表取締役社長)
1966年生まれ、山梨県出身。89年東京大学経済学部卒。在学中はラグビー部に所属。同年に住友商事入社、92年にはくばくに入社し、2003年4月1日より現職。

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