音楽の歴史を訴え、スケール感を演出するApple Music
1888年に始まり蓄音機、ジュークボックス、ラジオ、レコード、カーラジオ、ラジカセ、オープンリール、エイトトラック、カセットテープ、CD、カーステレオ、音楽ダウンロード(iTunes)、iPod、iPhoneと音楽の視聴形態の歴史を表現して2015年にApple Musicという形で音楽の消費形態が根本的に変わろうとしていることを演出している。音楽の視聴の仕方が変わることを世界スケールで訴える内容となっている。
Apple MusicはiTunesで蓄えた膨大な音楽資産に加えて、大きな特徴としてはBeats 1 Radioという配信番組がありロサンゼルス、ニューヨーク、ロンドンのスタジオから24時間365日放送されており、著名なDJやミュージシャンも登場する。
ラジオはタブにもなっており、簡単に探して聞くことが出来る。AWAやLINE MUSICのプレイリストと同じように“受動的に”音楽を聴くことができる仕組みである。
本当の勝負は追加機能の開発と有料サービススタート時
この様に各社サービスが始まり、順調に利用者を伸ばしているようであるが、本当の競争はまだまだこれからだ。というのも、まだ各サービスが「無料お試し期間」で本格的な課金が始まっていないので、どのくらいの収益を得ることが出来るかは未知数だからである。
音楽はスポンサーの関係などで広告モデルをとることが難しいからなおさらであろう。カラオケなどに広告が入っていないのはそのためである。
さらに各社次々に新機能を開発しており、すでに導入されているものもあるが「ソーシャル機能」「ランキング機能」「オフライン再生モード」「ローカル音源再生」「PC版やタブレット版、ウェアラブル端末、車載端末」など、有料サービス開始に向けて着々とサービス拡充をしてきている。
AWAは6月22日にApple TVでのAirPlay対応や、音源の音量調整機能、スリープタイマー機能を iOS版に追加した。LINE MUSICでは開始1カ月で430万ダウンロード、4億曲以上を再生というニュースリリースが出されているが、同時に「オフライン再生モード」をリリースしている。このようにユーザーが希望する新しいサービスをいかに早く開発しユーザーを獲得し囲い込むかということが重要になると予想している。
どのサービスも「海賊版対策」を前面に打ち出す
この様なサービスが受け入れられるためには、当然であるが楽曲供給サイドの協力も必要になってくる。そのためにどのサービスも掲げているのは「海賊版対策」である。
日本レコード協会の調査によると2013年9月調査時点での年間違法ダウンロードファイル数は29.3億ファイルに上るとしているほど深刻だ。
楽曲単位でのユーザーあたりの課金額は音楽定額配信サービスではCD販売やダウンロードより少ないかもしれないが、ユーザー層の拡大や何よりも海賊版の減少が見込めるのであれば、業界全体にとってはプラスに働くのではないか。
利用者はいちいち手間をかけて違法の音楽をダウンロードして、懲罰やウィルス感染、ネットトラブルのリスクにさらされるよりも、月額の固定料金を支払って聞き放題の方がお手軽で安心であることは間違いない。とはいえ、アーティストによっては新譜が提供されないケースもあるので、あらゆる課題が一気に解消とはいかないだろう。
有料課金が本格化して、新しい機能が充実してくる今年度末にはどのような進化を遂げているだろうか。
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