9月18日、『編集会議』2015年秋号刊行記念として、「又吉直樹をめぐる編集者たち」と題したトークイベントが下北沢の本屋B&Bで行われた。社会現象とも言っても過言ではない、お笑いコンビ「ピース」又吉直樹さんの『火花』。一芸人だった又吉直樹さんが、いまや芥川賞作家として脚光を浴びるまでには、どのような背景があったのか。そのカギを握る3人の編集者たちが、『火花』の誕生秘話や又吉さんに感じた作家としての可能性などについて語り合った。
(左から)森山裕之氏、浅井茉莉子氏、九龍ジョー氏
『火花』は読めば読むほど、深みにはまっていく
森山裕之:
浅井さんは『火花』の担当編集として、“最初の読者”ですね。昨年のちょうどいま頃は、まさに執筆していた時期ですか?
浅井茉莉子:
9月ごろから書き始めていただいたので、そうですね。校了したのが12月の半ばなので、実質3カ月という、あまり時間がないなかでの執筆だったと思います。とは言っても、わたしはただ原稿が届くのを楽しみにしていただけですが。最後の最後まで又吉さんに細かくゲラを見ていただき、アドレナリンが出ている状態だったので、脱稿したときの脱力感はすごく覚えています。
森山:
最初からあのラストだったんですか。
浅井:
又吉さんはラストを決めずに書かれていたみたいです。徳永が最終的にどうなるのかと途中で聞いたところ、「彼が芸人として成功するのかどうかも決めていない」とおっしゃっていて。段階的に読んでいましたが、全部読み終わったときは、素晴らしい作品をいただいたなと思いました。読めば読むほど、又吉さんの考えている深みにはまっていくというか。
森山:
僕は、初めてこのラストを読んで、これは彼にとって一生に一度の作品ではなく、「次もまたきっと書いてくれる」と感じて嬉しかった。これは編集者としての感想です。一読者としては、神谷の彼女・真樹さんに恋をしてしまった(笑)。本当に素晴らしい青春小説でした。
