又吉直樹『火花』をめぐる編集者たち——森山裕之 × 九龍ジョー × 浅井茉莉子【後編】

9月18日、『編集会議』2015年秋号刊行記念として、「又吉直樹をめぐる編集者たち」と題したトークイベントが下北沢の本屋B&Bで行われた。社会現象とも言っても過言ではない、お笑いコンビ「ピース」又吉直樹さんの『火花』。一芸人だった又吉直樹さんが、いまや芥川賞作家として脚光を浴びるまでには、どのような背景があったのか。そのカギを握る3人の編集者たちが、『火花』の誕生秘話や又吉さんに感じた作家としての可能性などについて語り合った。

【前編はこちら

(左から)森山裕之氏、浅井茉莉子氏、九龍ジョー氏

最初は又吉さんに書くことを断わられるはずだった

森山:

又吉くんの文章を読めば、出版社のあらゆる編集者たちが彼に小説を書いてもらいたいと考えていたと思うんですよね。でも結果的に浅井さんが編集者だったからこそ『火花』が生まれた。

浅井:

そう言っていただくこともありますが、全てはタイミングだったのかと思います。『編集会議』でもお話しましたが、又吉さんが『別冊 文藝春秋』を読んでいることを知り、2011年の文学フリマで初めてお会いして依頼をしたのがきっかけです。又吉さんが書かれていたものがすごく面白かったので、「小説を書いてください」とお手紙を出し、メールで返事がきて、一度お会いすることになりました。

ただ又吉さんと初めてお会いしたときは、後輩芸人の方も一緒だったんです。芥川賞受賞パーティーの2次会で、久しぶりにその後輩芸人の方とお会いしたんですが、「初めてお会いしたときに僕がいたのは、本当は断り役としていたんですよ。又吉さんは一人じゃ断れないから」と言われたんです。でも、断り役だったはずのその方が、偶然にも私と出身が同じだったこともあって話が盛り上がり、話が進んでいくうちに味方になってくれたんです。「又吉さん、絶対に小説を書くべきだ!」って(笑)。それで又吉さんも断れなくなってしまったそうです。帰り際には「断れって言っただろ」と又吉さんに怒られたそうですが(笑)。だから、運がよかったんですよね。そこから何回かお会いして、半年ぐらい経ってから書きましょうとなりました。

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