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GREY クリエイティブこそ、エージェンシー成長の源泉

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「宣伝会議」12月号(11月1日発売)に、ニューヨーク視察研修ツアーのレポートを掲載します。視察から見えてきた米国広告ビジネスの今、そして日本の広告界がめざすべき方向性を5つのキーワードで捉えます。こちらも、ぜひご覧ください。

GREY最大の企業資産は、優れたクリエイティブを生み出す「人材」であるとし、社員がクリエイティビティを最大限に発揮できるよう、オフィス環境の整備や社内ルールの策定に余念がない。

世界96カ国154都市のオフィスに1万人の社員を抱えるWPPグループのフルサービスエージェンシー・GREY。ニューヨーク本社では1100人もの社員が、グローバルからローカル、大手から中小まで、96のブランドにサービスを提供している。

「5年前は『ニューヨークで最悪のエージェンシー』とすら言われていましたが、今では『ニューヨークで最も素晴らしいエージェンシー』と呼ばれるようになりました」と話すのは、ニューヨーク本社社長でワールドワイド CCOを務めるTor Myhren氏。

一時低迷していたGREYが、ここ数年で本社従業員数3倍と規模を大幅に拡大し、驚異のV字回復を遂げたのは、彼がクリエイティブ出身者として初めて本社社長に就任した2007年以降のことだ。2013年は22のピッチで20勝という好成績をあげ、『Advertising Age』および『ADWEEK』のエージェンシー・オブ・ザ・イヤー2013、『Campaign』のネットワーク・オブ・ザ・イヤー2014に選ばれ、カンヌライオンズ2015ではネットワーク全体で113のライオンを獲得した。主なクライアントはP&G(1956年~)、キヤノン(1976年~)、シマンテック(2003年~)、DIRECTV(2009年~)などで、パートナーシップの継続率は95%に達する。

GREYのこれまでの歩みや、価値観をまとめた3分あまりのムービー。

GREY成功の鍵は、クリエイティビティを最重視する企業文化を浸透させ、維持していることにあるという。

「GREYにとって最も重要なファクターはクリエイティビティ。クリエイティブ出身の私がトップに就いたのも、この方針を明示するための人事と言えるでしょう。営業部門の3倍の数の社員を擁するクリエイティブ部門が、会社を牽引しています。企業文化はクリエイティビティを育てるものでなければならず、その浸透・維持が会社の成長につながると信じています」とMyhren氏。

GREYが手がけるすべてのクリエイティブワークは、「斬新でオリジナリティがあり、時代を先んじたものであるかどうか」を基準に10段階(10:Best in World~1:Toxic)で評価され、7以上のスコアを取ることが目標に掲げられている。

社内に設置されているイノベーション・ラボ。日常業務を離れて新しいアイデアを発想することを、全社的に推奨している。

そして最も重要な企業資産は、そうした優れたクリエイティブを生み出す「人材」であるとし、社員が優れたクリエイティビティを発揮できるよう、オフィス環境の整備や社内ルールの策定に余念がない。

例えば広告、メディア、ショッパーマーケティング、PR、アクティベーション、デザイン、デジタル、ソーシャルといった、あらゆる機能を持つニューヨーク本社だが、ワークスペースは部署別で分かれておらず、部門の垣根を超えた社員同士のコラボレーションを生みやすいオープンなつくりとしている。

また、毎週木曜日の9時~12時は社内外の会議を一切禁止し、社員一人ひとりが情報・知識をインプットしたり、アイデアを考えるための時間に充てる。テクノロジー企業やメディア企業など社外のパートナーが毎週来社し、クライアントワークとは離れたところで新しいアイデアを発想するための「イノベーション・ラボ」を設置しているほか、「大きなリスクを取って挑戦したけれど、失敗した人」を高く評価し、名前入りのトロフィーを贈る習慣も特徴的だ。

さらに、「いま会社で何が起こっているのか」を現場社員にも見えるようにする「経営の透明性」も重視。会社に対する疑問や要望を投げかけると、原則5日以内にマネジメント層からの返答を得られる社内イントラシステム「Ask Grey.com」も継続して運用している。

次ページ 「広告業界外とのコラボレーションが急務」へ続く