コラム

宣伝会議サミット2015 レポート

経営から考える「ブランド」と「マーケティング」-カルビー×マツダ対談

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「宣伝会議サミット2015」が11月19日、ANAインターコンチネンタルホテル東京にて開催された。ブランドとマーケティングをテーマに、今注目を集める2社によるパネルディスカッションをレポートとして紹介する。

講演者

  • カルビー株式会社 代表取締役社長 兼 COO 伊藤 秀二 氏
  • マツダ株式会社 常務執行役員 営業領域総括、グローバルマーケティング・カスタマーサービス・販売革新担当 毛籠 勝弘 氏

企業メッセージと経営について

——現在の経営方針について、ブランディングやマーケティング視点でのお話をお聞かせください。

カルビー株式会社 代表取締役社長 兼 COO 伊藤 秀二 氏

伊藤:実は、カルビーは1992年まで経営企画部門がありませんでした。会社がある一定の規模になり、体制を整えようと総合企画室を作り、そこで初めて企業としての理念体型をまとめました。その後2006年、私がマーケティング本部長になった時には、“掘りだそう、自然の力。”というコーポレートメッセージを作りました。ここには、カルビーがどんな会社で、何を提供しているのか、10年後にどんな顧客が中心の会社に変わっていく必要があるのかといったメッセージを込めています。そして2009年に私が社長になり、グローバル食品企業への転換というヴィジョンを掲げて、新管理体制での改革を進め、今7年目になります。

毛籠:マツダは「走る歓び」をブランドエッセンスに掲げています。走る歓びにあふれる車を作り、共に走り、歓び、生きていく。そういう価値のある車を提供したいという思いを、2000年に一つのブランドエッセンスビデオにまとめました。これは外部に対する広告として制作したのではなく、マツダのグローバルグループを含めた全従業員向けのもので、大きなコンベンションやイベントなどでは必ず見るようにしています。

——企業メッセージを社内外に発信、浸透させるために経営トップとしてどんな取り組みを行っていますか。

伊藤:我々は、2009年に作ったビジネスの方針を今もなお継続して使用しています。昔は毎年のように変えていたのですが、同じメッセージを継続的に社内に伝え続けることも必要なのではないかと思っています。大きな方向性を従業員全員が理解することで、我々が推し進めている分権化も成り立ちます。マーケティングは国内4つの地域本部主体で行っているのですが、それには構成員全員がマーケターにならなくてはいけないと、私は強く思っています。そのためにもメッセージを継続してわかりやすく発信する。それが、本社やトップの役割だと思うのです。

“掘りだそう、自然の力。”というコーポレートメッセージも2006年から使用しています。当時のカルビーは、知名度は高い一方、お客様が抱くイメージは明るさや楽しさ、親しみやすさが中心でした。

しかし、我々が本当に伝えたかったのは、商品の原材料となる農産物の開発から真剣に取り組んでいるというような企業姿勢です。そこで、我々の10年後の中心顧客を想定し、開拓すべき新市場を設定して、そこに集中したビジネスを展開したのです。事実、我々は、自然感や素材感を追求したフルグラという商品に注力し、10年経った今、ニーズと売上の拡大という成果につなげることができました。

マツダ株式会社 常務執行役員 営業領域総括、グローバルマーケティング・カスタマーサービス・販売革新担当 毛籠 勝弘 氏

毛籠:最近マツダは少し変わってきたねというご評価をいただいていますが、以前は自動車業界の一員としての性といいますか、フルラインアップメーカーになりたいという野望を捨てきれず、お客様の信頼を裏切るようなことが幾度かあり、残念な認識やイメージを抱かれていました。しかしそのような状況に反省した我々は、規模の大小の価値観から決別し、経営の考え方そのものを大転換したのです。

小さくても意味のあるメーカーになりたい。走る歓び、車のある生活の楽しさ、そういった価値を提供できる会社になろうと、社長以下、全役員、幹部社員がコミットし、モノづくり、マーケティングセールス、カスタマーサービスを含め、全社のベクトルを一つの方向に向け、ここ5~6年改革活動を続けてきています。

その一つとして、マツダのブランドの考え方をグローバルの従業員に徹底して理解してもらうべく、去年も広島に数十か国、総勢1000名に来ていただき、デザイン、製造、開発、マーケティング、さらにドライビングアカデミーと呼んでいる運転操作などを習得して帰っていただく活動を行いました。これは今後一般のお客さまにも広げていきたいと思っており、リアルな体験を通じてマツダを理解していただき、選び続けてもらえるようにしていきたいと思っています。テレビの宣伝から、お客様とのインタラクションのところへどんどん軸足を移して、我々の思想や考え方をより多くわかっていただくための努力をしていきたいと思っています。

——今後の展望や、マーケティングを担う方々へのメッセージをお願いします。

伊藤:商品が売れる、需要が生まれるのは、我々作る側のイノベーションと、食べる側のお客様のイノベーションが合致した時です。つまり我々の課題として忘れてはならないのが、どうやって需要を作りだすか、見つけ出すかということです。お客様の変化を見抜き、新しい行動を起こさせる。それには、お客様や市場と会話をすることが大切です。これは日本だけでなく海外でも同じです。10年後を見据えたヴィジョンを描き、マーケティング本部が中心となって、真の需要を作る、そういうことをしていかなければならないと思います。

毛籠:マツダは全世界130か国でグローバルビジネスをやっておりますが、日本と海外を比べると、海外はエージェンシーも含め、マーケティングの専門性が非常に高いと思います。それに比べ日本は、経営層、経営陣が、マーケティングという概念を極めて狭くとらえる傾向がある。マーケティング戦略というものは、ブランド戦略ともビジネス戦略とも直結していますから、経営陣全員がコミットできるようにもっていく必要があるのです。それには、和を大切にする日本人の特質を活かすといいと思います。全員参画で問題に取り組めば、会社としての力も存分に発揮できます。我々は今後もそういったやり方を貫いていきたいと思っています。


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