講演者
- ヤンマー株式会社 アグリ事業本部経営企画部 ブランドマーケティンググループ 部長 三原 真紀子 氏
「伝わらないものは、存在しないものと同じ」を肝に銘じ、ブランドを再構築
ヤンマーは、大阪に本社がある、創業から100年以上続く非上場のファミリー企業です。世界初の小型ディーゼルを完成させ、これをさまざまな作業機に展開しながら発展し、現在の社長・山岡健人が4代目にあたります。
ヤンマーという社名の由来は、豊作の象徴であるトンボの王様 「オニヤンマ」と、創業者である山岡孫吉の名前をかけて命名されたものです。ヤンマーと言えば、おそらく「ヤン坊・マー坊」のことを想起される方が多いのではないでしょうか。
1959年から始まったこの親しみやすい双子のキャラクターが登場する天気予報は、私たちのお客様である農業従事者を中心とする一次産業の皆さんに貢献したいという思いからスタートしました。天気と仕事が非常に密接している仕事ですから。
50年以上前に始めたのですが、弊社のなかでも非常に成功したマーケティング事例の一つではないかと思います。ただし、製品よりも「ヤン坊・マー坊」のほうが有名になってしまった、という大きな悩みもありました。またヤンマーは、農業機械だけでなく、欧州、南北アメリカ、オセアニアといった地域で、ヨットエンジンのトップシェアを誇るマリン事業の強い企業として認知されています。このように、ブランドイメージが統一しないという悩みもありました。要するに、事業のイメージもコーポレートイメージもバラバラ、というのがとても大きな課題だったわけです。
社会の認識とヤンマーの実態の乖離を何とか埋めて、イメージの分散をまとめたいのですが、社内だけでは解決できそうにありませんでした。そこで、外部の力も借りブランドを再構築しようと考え、SAMURAIの佐藤可士和さんにブランディングの再構築の協力をお願いしました。
佐藤さんは「非常に強い本質的な価値を持っている」と当社のポテンシャルを感じていただきました。その一方で「伝わらないものは、存在しないものと同じ」という非常に厳しい言葉もいただきました。この言葉を肝に銘じ、ヤンマーは2012年、ブランディングの再構築への取り組み『プレミアムブランド』を始動させたのです。
ヤンマーの本質的価値は、世界最高峰のエンジン技術があること、これを多くの作業機に搭載して、お客様に満足いただける商品を提供することです。こういった価値を戦略的にイメージコントロールして、世の中にきっちりと伝えていく。そのために、デザインの力を借りて価値を可視化し、人を動かすことがヤンマーブランドをプレミアムにするブランディングだと定義しました。
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