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コラム

REPORT:相次ぐコンサルティング会社のエージェンシー買収、日本市場の動向を探る

大手コンサル会社・米国デロイトが社内に「クリエイティブ人材」を抱える背景

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デジタルマーケティングが経営の重要なファクターになる時代、米国ではコンサルティング企業による広告会社(エージェンシー)買収の動きが活発化し、多くの企業が広告領域に進出している。AdverTimesでは、その動向を6回にわたってレポートする。第5回は、デロイト トーマツ コンサルティングの岩渕匡敦氏に、なぜコンサルティング会社がクリエイティブエージェンシーを買収するのかについて聞いた。

画像提供:shutterstock

Q:マーケティング領域でもコンサルティングサービスを強化する理由は?

デロイト トーマツ コンサルティング
Deloitte Digital 戦略コンサルティング パートナー
岩渕 匡敦 氏

私たちがコンサルティングサービスとして提供するマーケティングは、市場を創造し、チャネル戦略を考え、コミュニケーション設計を行い、利益を獲得する「経営」全般を指している。広告業界で言うところのコミュニケーションを中心としたマーケティングとは見方が異なり、経営の色合いが強い。

その上で、デロイト デジタルは、経営コンサルティングを生業とするデロイト トーマツ コンサルティングにおいて、企業のデジタル化のための改革を支援するサービスを提供している。デジタル化時代のマーケティングには物流戦略、ディストリビューター戦略など経営レベルの意思決定を含めた設計が必要となる。

米国に比べると、日本企業はまだ経営レベルでのデジタル化が、十分に実現できていない状況だ。今、日本企業が悩んでいるのは、企業よりも早いスピードで進展した消費者のデジタル化にいかに追随し、自社のデジタル化を実現するか、という点である。消費者との接点の再構築が必要になるため、マーケティング領域の重要性は高まってくる。

Q:広告会社と競合するようなビジネスになるのか。

広告会社の生業である広告代理業務や制作に注力することはなく、コンサルティング会社として制作やメディアバイイングのみを請け負うという仕事は志向しない。時々、デジタルを活用したキャンペーン単体などの相談を受けるが、そうした戦術的な依頼はお受けしないケースが多い。

元来デロイト デジタルは経営コンサルティングを生業としており、仕事の進め方も経営課題を起点としたもの。日本企業には今はデジタル化の「戦略」がより重要になっている。中立的なビジネス提言を主軸としているがゆえに、制作などに偏ると中立性の維持ができなくなる、とも言える。実際、広告会社とは領域を分けて協働することは多い。

Q:グローバルでデロイトがクリエイティブエージェンシーを買収している理由は。

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米国でデロイト デジタルが独立系のクリエイティブエージェンシー「Heat(ヒート)」を買収したことが広告業界で話題になっている。米国のデロイトもデジタルコンサルティングエージェンシーという新しい戦略的な領域のビジネスを行っており、HeatはそのCreative機能の一部を担うと想定されている。

コンサルタントの仕事は戦略の設計図を描くような仕事でもあり、そのプロセスにおいて、コミュニケーションやクリエイティブの知見も必要になるため、デザイナーなど人材を社内に抱えている。よって、私たちが制作や広告で規模を追うわけではい。私たちの仕事はたとえば、より戦略的なブリーフをクライアントと制作側のために作ること。先ほど述べた協働が多い、というのはそういうことであり、実際の制作プロセスにおいては、広告会社や制作会社などが専門力を発揮すべきものと思っている。

今は企業の戦略策定にも右脳的な発想が求められる時代である。クリエイティブ人材を抱える背景には、経営の中にデザイン思考を取り入れようとする目的の方が大きい。