アートの町へ一歩踏み出したイベント
年間を通して310万人(2014 年)もの観光客が訪れる南紀白浜。しかし、安定した感もあり、新たな南紀白浜の魅力を模索していた。そんな白浜温泉旅館協同組合がタッグを組んだのが大阪芸術大学だ。「瀬戸内国際芸術祭の盛り上がりを見ていたこともあり、アートを軸にここを活性化していきたいと考えた」と、白浜温泉旅館協同組合 副理事長 八田徹さんは話す。そして2014年4月に、両者は包括契約を締結し、「白浜アートプロジェクト」がスタートした。
プロジェクトの柱は、音楽とアート。その両軸で、年間を通してプログラムを実施する。観光客の人気を集めているのが、ホテル、旅館のロビーで行うコンサートだ。観光客の年齢層が幅広いことから、誰もが知っているクラシックをはじめ、ディズニー、映画音楽などポピュラー曲を、サックス四重奏、フルート四重奏など、毎回異なるセットで演奏。しっかりとした演奏力と音色に満足する人は多く、確実に動員数が増えており、今後、ホテル以外の場所での展開も検討されている。
夏には「大阪芸術大学WEEK」と題し、白浜海水浴場とホテルロビーを使って、10日間にわたりライブペインティングを実施した。このイベントの中心となるのは、同大学で結成され、関西を中心に活動するパフォーマンスグループ「透明回線」。ライブペイントと音響、映像を融合し、独自の世界観を見せる空間をライブでつくりあげる。今回、「観光客に南紀白浜に親しみを感じてほしい」と考え、パンダ、ヒョウなどこの地にいる動物をモチーフに作品を制作した。会期中、彼らは公開制作を行った。最後の3 日間は、縦1.8メートル、横2.7メートルの作品4枚をビーチに運び新たなボードと組み合わせてライブペイティング。最終的に完成した横幅9メートル近い作品に映像をプロジェクションし、打ち上げ花火と共にイベントの最後の夜を盛り上げた。
子どもたちに自由にペイントしてもらうワークショップでは、滞在中、毎日描きに来る子や「もっと描きたい」とその場から帰らない子など、夢中になる子どもたちが続出。透明回線の2つの試みを通して、観光客に白浜ならではのアートの面白さを体感してもらうことができた。
また、観光客が多く訪れる紀州クエ専門の料理店「九絵亭」で、学生たちがデザインした食器を使用している。提案された案の中から、浅野保料理長が会席料理の食器としてふさわしい5案を選んだ。一部の食器は店内で販売もされている。
2年間続ける中で、今後の方向性も見えてきた。近い将来、アートをきっかけに白浜に足を運んでくれる人を増やし、楽しんでもらうための拠点として、現在3Dプリンターなどを揃えたFabCafeのオープンを検討中だ。アーティストはもちろん、訪れた人たちにここでオリジナルの作品をつくり、持ち帰ってもらう——。それによって、これまでとは違う南紀白浜の新しいコンテンツを発信していきたい考えだ。
編集協力/大阪芸術大学
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