“評価された会見” にも落とし穴 イオン社長の「ガス爆発」発言が独り歩きした理由 危機広報の専門家が語る、重大事故会見の作法と改善点

被災・重大事故が発生した際、企業はいつ会見を開き、何を伝えるべきなのか。7月28日に最大震度7を観測した熊本地震後に「イオンモール熊本」(熊本県嘉島町)で発生した爆発事故について、イオンは事故翌日に熊本市内で記者会見を開いた。詳しい原因や設備の作動状況が分からない中、吉田昭夫社長は現地で、確認できている事実と未確認事項を分けて説明。店舗の復旧や経営への影響を問われると、人命救助を最優先する姿勢を明確に示した。

不祥事やハラスメントなどと異なり、災害や重大事故は予告なく発生する。企業は平時から何を備え、事故発生後はどのような順序で情報を発信すべきなのか。アステリア執行役員コミュニケーション本部長で、広報勉強会@イフラボ主宰の長沼史宏氏に、災害・重大事故をめぐる初回会見のタイミングや未確認情報の扱い、その後の継続発信、平時から備えるべき危機管理広報について聞いた。

写真 会見のイメージ画像

重大事故会見のイメージ(ChatGPTにより作成)

被害映像が流れるほど企業への疑念も広がる

まず注意すべきなのは、重大事故が発生すると、損傷した施設や混乱する現場の映像が繰り返し報道され、企業イメージの悪化につながる懸念があることだ。

今回も、イオンモール熊本の建物が大きく損傷した映像が、テレビなどで全国に繰り返し流れた。企業側からの説明がない状態が続けば、「この会社は何をしているのか」「ほかの店舗は安全なのか」「経営者は表に出ないのか」といった疑念が広がりかねない。

長沼氏は、事故翌日に吉田社長が熊本市内で会見したことを「最短に近い、理想的なタイミングだった」と評価する。

被害映像が長時間にわたって流れれば、事故が起きた施設だけでなく、企業やブランド全体への不安につながる。長沼氏は「経営トップが早期に姿を見せ、謝罪と対応方針を示すことには、疑念やネガティブな印象の拡大を抑える意味がある」と指摘する。

似た事例として挙げるのが、2020年に福島・郡山の飲食店「しゃぶしゃぶ温野菜 郡山新さくら通り店」で発生した爆発事故だ。運営会社の親会社コロワイドは事故当日に謝罪を発表し、社長も同日午後に現地で会見した。

当日は事故が大きく報道されたが、その後、会社の姿勢をめぐる批判が長期化する事態には至らなかった。長沼氏は、トップが早期に説明したことが、事態の収束に一定の役割を果たしたと見る。

初回会見で示すべきは「事態の受け止め」

次に重要なのは、初回会見の目的を、事故原因の全容を説明することだと考えないことだ。

事故翌日の段階では、爆発の原因や緊急遮断装置の作動状況、避難後に従業員が館内へ戻った経緯など、多くの事項が明らかになっていなかった。しかし、人命が失われる重大事故では、原因の判明を待たず、速やかに会見を開くことが基本になるという。

初回会見で示すべきなのは、その時点で確認できている死者や負傷者などの被害状況、判明している範囲での経緯、現在の対応、そして事態を企業や経営者がどのように受け止めているかである。

長沼氏は「経営者の中には、『会見を開いても、まだ説明できる情報がない』と先延ばしにしようとする人もいる。しかし、社会が見ているのは事故の細かな事実だけではない。会社が事態をどう受け止め、経営トップがどのような姿勢で向き合っているかも見ている」と指摘する。

さらに、「歴史に残る謝罪会見の成功事例は、事故や問題の発生当日か翌日に開かれたものが多い。逆に、失敗事例ほど会見の開催が遅れ、それ自体が批判の材料になっている」と話す。

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