なぜ「ADVERTISING WEEK」を日本で開催するのですか? 事務局長・笠松良彦さんに聞きました

2016年にアジア初として東京で開催される「Advertising Week Asia 2016」を記念して、広告業界のタブーに挑戦する特別コラムを実施。同イベントのアドバイザーにAdverTimes編集部からの質問に答えてもらいました。最終回は、Advertising Week Asia・日本事務局長を務める笠松良彦氏に「なぜ『ADVERTISING WEEK』を日本で開催するのですか?」と聞きました。

笠松良彦
イグナイト Executive Producer 代表取締役社長
Advertising Week Asia 日本事務局長

1964年生まれ。1986年慶応義塾大学卒業。1992年博報堂入社。営業職として、媒体・制作・PR・イベント等、コミュニケーション戦略全体を統括。2001年電通入社。メディアマーケティング局チーフ・ストラジテストとしてメディアプランニングを中心に、CRやプロモーションとのシナジーを考慮した統合プランニングやAORコンサルティングを実施。2005年10月から10年3月まで、電通とリクルートのジョイントベンチャーであるMedia Shakers代表取締役社長。電通コミュニケーションデザインセンターを経て、2010年7月、イグナイト設立。「進化する広告宣伝の手法」、「ケーススタディ/広告会社 電通」「コミュニケーションデザイン」などのタイトルで 雑誌掲載多数。2006年カンヌ国際広告祭メディア部門プロモライオン受賞。2013年2月「これからの広告人へ」アスキー新書 上梓。

■質問
なぜ「ADVERTISING WEEK」を日本で開催するのですか?

■回答者
笠松良彦氏(イグナイト・Advertising Week Asia 日本事務局長)

広告業界に異質な「喪失感」を感じる

私は、日本の広告業界に「大きな希望」と「大きな危惧」の両方を感じています。

大きな希望は、古来日本人が持っている、「多様性を飲みこみ、独自に発展させる力」、「非常に細やかな部分まで神経を行き届かせる緻密さ」、「黒でも白でもなく、グレイの領域を理解する知性」です。こういった日本人独特の文化は、広告業界の発展においても、大きな希望の糧としてこれからもあると信じています。

その一方で、大きな危惧とは、「楽しくなさそう」に仕事をしている後輩や同僚が増えていることです。

「最近、どう?」「いや~どうなんすかね~?うちの会社どうなっていくんすかね~」

こういった会話が、この数年で圧倒的に増えてきた気がします。もちろん、いわゆる仕事に対する愚痴は昔からあったわけですが、明らかに昔のそれとは違う、何か異質な「喪失感」のようなものを感じるのです。これには大きく2つの要因があると思います。

一つは、広告主を中心とした業界環境の変化。もう一つは、世の中のコンプライアンスへの過剰な意識です。

良くも悪くも、いわゆる「Mad Man」の時代(日本では昭和の広告業界)は、目立つこと、面白いことを広告主も広告会社も一緒になって楽しんでいた時代でした。経済成長に伴って、商品サービスの売り上げは成長し、誰もが、“広告”をエンジョイしていました。イベントも、費用対効果を細かく言うよりも、「とにかく目立つことが大切」ということが許されていた時代でもあったかと思います。いろんな意味でおおらかな時代でした。

そして広告人に求められるのは、常に「何か新しいことを提案する発想力」や「とんでもない人脈を持っているネットワーク力」、世に言う「人間力」が一番求められていた気がします。朝まで飲むのは当たり前。その中から独自のネットワークを各自が構築して、遊びながら、常に「次の新しい何か」を追い求めていた時代。

これが、2000年ころを境に急速に、「効果検証」「透明性」「説明責任」という言葉にさらされるようになりました。もちろん、デジタルの出現により、一部の効果検証が、“あたかも”本当にできるかのように言われ始めたことも、この時代の変化を後押ししました。(デジタルであれ、従来のマス広告であれ、直接間接を含めた広告効果を説明するには、いまだに余りに説明不可能な要素が多いのは事実です。)

大手の広告会社を中心に、「メディア・マーケティング部門」が続々と設立され、メディアの費用対効果、クリエイティブとの相関性、ブランドへの寄与度、購買への貢献度など、あらゆる角度から、「説明責任」と「再現性」を求める風潮が一気に加速していきました。かくいう私も2001年に博報堂から電通のメディア・マーケティング局に転職し、統合メディア・プランナーとして、その潮流の真っただ中にいました。それから既に15年が経ちます。

いまだに結論めいたことを言うのは早いかもと思いますが、今、私が確信していることがあります。それは、「広告は、そのプランニングの局面においては、できる限り科学的にアプローチをすることが大切だけれども、効果検証については、一つ一つの商品・サービス固有の課題設定をすべきである」ということです。

全ての商品やサービスに共通するような「効果検証の黄金律」は無いということです。なぜなら、それらの商品・サービスには、固有の別々のターゲット生活者がいるからです。これを私は「コミュニティ・マーケティング/もしくはマイクロ・マーケティング」と呼んでいます。

日本のような成熟したマーケットにおいては、すでにマスは存在していないのです。いろいろなコミュニティが、それぞれに固有のカルチャーや価値観を持ち、独立して、もしくは複雑に絡み合いながら存在している。そんな時代になってきています。だからこそ、いわゆる「定量調査」とか「大きなデータベース」で一律で生活者をきることができなくなってきていると思います。

もう少し踏み込んだ言い方をすると、“データベースから、ある程度のコミュニティの塊を抽出して、その人たちの傾向を知ることはできるが、その人々の心の奥底に眠っているインサイト(潜在意識)は探りだせない”ということです。「ビッグデータ時代」と言われながら、いくつかの企業では、データからどうやって何を切り出せばいいのかが分からないという話も聞きます。

話が逸れました。私が言いたかったのは、特定の、そして、様々な独自のコミュニティのインサイトを知ろうとしたら、データからではわからない、それは、生の個別の人脈ベースでの深い知見でなければ、革新的なアイデアには繋がらないといことです。

回りくどくてすいません。

はい、そのためには、プライベートの時間も含めて、どれだけ、そういうコミュニティの人々と、どっぷり情報交換の場を持っているのか?こそが、これからの広告人に求められることだと思うのです。

朝まで飲んで仲良くなることは、非常に意味がある行動です。土日に一緒にイベントに出かけることも重要な業務です。ですが、残念ながら、今の広告会社では、「朝ちゃんと来て、夜遅くまで仕事していること」が良いとされています。後輩を夜飲みに誘うのも、へたしたらパワハラと言われてしまいます。さらに現場で一番お金が必要な人たちは、経費も使えません。

「デジタル化、グローバル化が必要だ」と、全ての広告会社が言っています。そして同様に全ての会社において「イノベーションとインサイトが大事だ」と言われています。でも、本当に必要なのは、「人間力強化のためのサポートの仕組み」ではないのか?

僕はそう思っています。

今回のイベントでは、有志によるAdvisory Councilにそうそうたるメンバーに参加してもらいました。何十時間にもわたる議論の中で、到達した共通の想いは、「熱狂を創りだす」というテーマ。これは、我々、広告人は、「もともと、熱狂を創りだしたい、その瞬間に立ち会いたい」、そんな想いがあって、そして何よりも「広告」が好きで、この業界にはいったはずだ!という想いがありました。Advertising Weekそのものは、欧米を中心とした、広告業界最大の祭典です。これをアジアで開催するのに、日本以外の場所でいいのか?という想いもありました。

「この業界には、こんな面白い人たちがいるんだ!」

これを感じてほしくて、Advertising Week Asiaを東京で開催します。この想いが少しでも多くのみなさんに伝わったら嬉しいです。

Advertising Week Asia 2016
Advertising Week Asia 2016

博報堂 長谷部守彦

D2C 宝珠山 卓志

博報堂ケトル 嶋浩一郎

松田康利事務所 松田康利

ぐるなび 藤田 明久

Taro & Company 児玉太郎

TBWA\HAKUHODO 佐藤雄三

電通 頼 英夫

ツナグ 佐藤 尚之

イグナイト 笠松良彦

Advertising Week Asia 2016

博報堂 長谷部守彦

D2C 宝珠山 卓志

博報堂ケトル 嶋浩一郎

松田康利事務所 松田康利

ぐるなび 藤田 明久

Taro & Company 児玉太郎

TBWA\HAKUHODO 佐藤雄三

電通 頼 英夫

ツナグ 佐藤 尚之

イグナイト 笠松良彦

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