コラム

電通デザイントーク中継シリーズ

石川善樹×ドミニク・チェン×水口哲也×山川宏×日塔史「人工知能は『アル』から『イル』へ。」【前編】

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【前回】「落合陽一×菅野薫「『現代の魔法使い』が想像する未来と広告」【後編】」はこちら

人工知能について「人間が行っている仕事を奪うもの」と悲観的に捉える人もいるが、本来は、人間の生き方を拡張する方向に使われるべきものだ。今回の電通デザイントークは人工知能がもたらす未来を探る。登壇するのは、医学博士で予防医学×AIの研究をしている石川善樹さん、情報学研究の第一人者でもあるIT起業家のドミニク・チェンさん、常にデジタル技術の最先端を取り込み新しい表現を創出し続けているクリエイターの水口哲也さん、ドワンゴ人工知能研究所所長の山川宏さん。技術の進展をポジティブに捉え、人工知能が「アル」だけでなく、当たり前に「イル」未来を、クリエイティビティや欲望、心、感情などを軸に語り合った。司会は電通のAIに特化した社内横断組織のリーダー日塔史さん。その様子を前・後編に分けてお届けする。
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AIは産業革命に匹敵するインパクトを持っている

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日塔:私は、人工知能など加速するテクノロジーを未来志向で産業活用していくことをテーマにしています。AIは現在第3次ブームと言われていますが、かつての数字やテキストのみを扱っていた時代から、今では画像や音声などの非構造化データを扱えるようになりました。画像の認識は人間の精度を超えたといわれています、音声認識も急速に進化しています。AIとは一体どのようなものであって、次のビジネスにどうつながるのか。それを考えるのが本日の趣旨です。最近ではマクロ経済学者が AIに言及するようになりました。駒澤大学の井上智洋先生は、AIは「汎用目的技術」であると言っています。汎用目的技術とは、さまざまな産業に使える技術のことです。過去に産業革命を起こしてきた蒸気や電気もまた、汎用目的技術でした。つまり、「蒸気→電気→IT≒AI」と歴史は進んでおり、AIは経済を成長させることができるという主張です。

山川:22年ほど富士通研究所で人工知能などの研究を行い、2014年からドワンゴ人工知能研究所に移りました。2007年から2010年ころにかけて、将棋のプロ棋士が直観的に次の一手を選択する際の脳の働きについての研究に関わりました。その当時、コンピューターは何億通りもの手が読めるものの、次手の良しあしの判断は劣りました。一方、人間は1、2の手筋しか読みませんが、その手筋を読み取る直観が強力でした。機械対人間は、“読み”対“直観”の勝負だったわけです。しかし、最近はディープラーニングによって AIもある程度の直観を持てるようになりました。その結果パワーバランスが崩れて、人間が勝てなくなってきました。

一方、創造性という側面で考えるとどうか。そもそも、創造性とは何でしょうか? 全体を部品に分けて、それらを組み合わせるのが創造性の基本です。ディープラーニングによって、顔の画像から目、鼻、口などの部品を取り出すことはできるようになりました。そしてAIは組み合わせることは元来得意です。ただし、現在はまだ多くの場合、価値の高い組み合わせの選択は自動化できていない。現状におけるAIは創造性の面では必ずしも人間を超えることができていません。

次ページ 「AIが発揮する「クリエイティビティ」とは?」へ続く

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