【前回】「世界の新しい常識「シンギュラリティー」とは?(前編)」はこちら
VRが進化すれば、リアルを渇望する気持ちも消える?
日塔:われわれ広告業界の仕事は「人間の欲望をつくること」です。例えば、十数年前に「オタク市場」が生まれたように、シンギュラリティーが起きると、人間の欲望の在り方も本能レベルで変わっていく可能性があります。
井上:特にバーチャルリアリティー市場は、それこそ指数関数的に伸びていくでしょう。しかしロボットによって、今以上に大量生産が可能になっても、人々がそれを消費するかどうかは分かりません。ベーシックインカムでお金が行き渡れば別かも知れませんが。
その一方で企業は、潜在的な需要を発掘する努力をしなければいけません。まさに、それは電通の役割で「需要がないなら、つくればいい」という考え方です。
ただし、バーチャルリアリティーの中で欲望を安価に充足できるようになれば、他の産業を全て壊滅してしまう可能性があります。例えば、映画館やテーマパークと全く同じ体験がバーチャル空間で実現すれば、わざわざ出向く必要がなくなります。
バーチャルリアリティーは、そういう恐ろしさも持っています。人間が一生バーチャルリアリティーの世界に引きこもっていいものかどうか、これが人類最後の“リアル”な議論になるかもしれません。
電通 ビジネスD&A局
現在、電通ライブでAIを中心とした「加速するテクノロジー」を活用したソリューション開発業務を担当。日本マーケティング協会客員研究員。2016年に論文「AI革命の『大分岐』で広告業界が動く~人を動かす次世代エージェント」がJAAA懸賞論文金賞を受賞(前年からの金賞連続受賞)したことをきっかけに、AIおよび先端テクノロジーに関する講演および寄稿多数。17年電通Watsonハッカソン「日本IBM賞」受賞。
日塔:一方で、リアルを渇望する気持ちも、出てきていますよね。例えば、音楽はデジタル空間が到来することで、お金を払わなくても聴けるようになりました。しかしその一方で、リアルなライブ空間で、アーティストを身体的に感じたいといった欲求も高まっています。
井上:それは、今が過渡期だからでしょう。いずれバーチャルとリアルが区別できないレベルにまで進化します。それが、バーチャルリアリティーの究極の姿だと思います。
松田:その通りです。個人的な展望ですが、おそらく2045年に人間は死ななくなります。しかしそれは、何も起きなければ「死なない」という意味で、外を歩いていて車にひかれれば、死ぬかもしれません。だから、危険を避けるために「1億総引きこもり」の時代になると思っています。
近い将来、人工知能の装置を頭に取り付けたり、脳にさし込んだりすると、視覚も聴覚も、そして触覚さえもシミュレートできるようになります。幸福感はニューロンの感じる電気信号ですから、脳に刺激を与えれば幸福を感じるようになります。
そういう世界の職業は、バーチャル空間内のモノをつくる仕事です。例えば、「バーチャル空間設計士」が生まれるかもしれません。
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