『世界から猫が消えたなら』の映像化で難しかったのは?
中村:永井さんが監督を務めた最新作『世界から猫が消えたなら』が絶賛公開中でございます。そんな中、先週ゲストで来た川村元気さんのエピソードにもあったんですが、かなり前に川村さんと永井監督はお会いしていて、その後に映画をお願いしますという話になって、原作を読んでみたと。
永井:『ジャッジ!』を撮る前に川村さんとお会いして、そのときに「最近僕、本を書いたんです」と渡されたんです。だから、自己紹介というか名刺みたいなものだったから、何も考えずに読んだというのが初め。「永井さんといつか映画をやりたいので、これから『ジャッジ!』を撮るんですよね。頑張ってください」ぐらいで終わってたんです。だから、僕は『ジャッジ!』の前にもう読んでいて、自分が撮るとはこれっぽっちも思ってなかったですね。
権八:でも、川村元気が近づいてきたときはキターみたいな感じはあったんですか? 10割バッターがキターと。
中村:『モテキ』キターと。
永井:映画を1本も撮ってないからキターというのもなくて、しかも川村さんは「僕は初めての監督とはやらない」みたいな。偉そうなんですよ(笑)。
中村:まぁ、偉そうではありますね(笑)。
権八:じゃあ、まず『ジャッジ!』を。
永井:そう、『ジャッジ!』を頑張ってくださいと。あれが試験だったんじゃないかな。
澤本:『ジャッジ!』をつくって、川村くんにも面白かったと褒めてもらえたのね。そのときに「『ジャッジ!』でコケなかったから、僕も永井さんと仕事ができる」と言っていた。だから、試験的なこともあったんじゃないですかね。最初の1作目の人とはやらないということで、1作目やったら、やっぱり永井さんはうまいと。人にも説得できるし、いいんじゃないかなということだったような。
権八:だから、もともと永井さんとやりたいという気持ちがあって、人に話しやすいということじゃないですか。『ジャッジ!』を撮って。
澤本:『ジャッジ!』はコメディなんだけど、『せか猫』は全然コメディじゃないですからね。号泣ものですから。
権八:見ました。実際に泣きましたけどね。
永井:試写室から出たときに会ってるじゃん。カラッカラだったよ(笑)。
権八:違う違う違う(笑)。あのシーンは泣きましたよ。ビデオ屋たつやの最後のあいつに見せなきゃいけない映画が見つからないんだよという。言っていいのかな、こういうこと。
永井:いいですよ。公開後はネタバレOKですから。
権八:映画づくりでは何を目指して?例えば先週の川村さんだと、もともとの原作が映画になんかならないだろうと思っていたと。それを永井監督が見事に映像に定着させてくれたとおっしゃっていて。
永井:『ジャッジ!』を読んだときに海外の審査会はどうやって実写にするんだと。潤沢にお金があるんだったらともかく、どうするんだというところからはじまっている。澤本さんの脚本の構成がまたパンクな感じで、今までの概念を壊すような構成がされていて、そこが破壊力でもあるけど、みんなどうやるんだ、みたいな感じがあったんですよ。
僕はCMを受けるときもそうだし、『世界から猫が消えたなら』もそうだけど、上がりが見えないもののほうが燃えてくるというか、受けたくなる。上がりが見えるもの、映像化しやすいものはその通りに撮っちゃうし、みんなの期待もわかっちゃうから魅力に感じないんですよね。それだったら、もうちょっとうまく撮れる人がいるという感じがあって、見えないやつのほうがミラクルがあるんじゃないかと。
澤本:『せか猫』も最初は見えなかった?
永井:見えなかった、全然。
澤本:本当にどうやって消すんだろうと。
権八:まだ見てない方は大勢いらっしゃると思うけど、ファンタジーなわけですよ。『世界から猫が消えたなら』というタイトルで、時計が消えたら、電話が消えたら、映画が消えたら・・・。そいうファンタジーでありながら、泣けるというところで人間の本質みたいなものが描かれていると思うんですけど、そのへんは撮っていて意識はされたんでしょうか?
永井:しました。原作は若い人にも向けて読みやすくポップにしてあると思うんですよね。ただ、映像で人の死を扱うときはもっと生々しくなるし、あまりポップに僕死ぬんだ、実感ないなぁみたいな感じでやると、家族を亡くしている方などが見て不快になる。映像は生々しくなるし、影響力が強いので、そういう意味では小説よりも静かめというか重厚感を出して撮っていきましたね。
だから、美術さんも最初はセットプランが非常にファンタジーしてたんですよ。ティム・バートンの映画ぐらいにカラフルで、「そういう世界じゃないとファンタジーを描けないでしょ?」みたいな。でも、僕は『悪人』じゃないけど、生々しいものにしてほしいと。その中で、VFXなどがあるギャップも楽しみたいし、死に対しては真摯に撮っていきたい。
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