少子高齢化を迎え、市場が縮小傾向にあるなか、あらゆる業界で新規顧客の開拓だけでなく、既存顧客のロイヤルティを高めることが重要になっている。さらに、スマートフォンの普及やデジタル化による顧客接点の広がりを受けて、企業のコミュニケーション活動もマス広告中心からパーソナライズされた展開を強化していく必要がある。そこで2016年9月13日、大阪・中之島で「ロイヤル顧客をつくる秘訣」をテーマにしたセミナーが開催された。
三越伊勢丹はどう顧客をロイヤル化へと導くのか?
第1部は、三越伊勢丹ホールディングスの営業戦略部長・柳正明氏による「三越伊勢丹 顧客戦略」と題した講演で幕を明けた。
昨今の市場環境について、柳氏は「市場の動きがスピーディーになる今、昨年のベストセラーは今年のベストセラーにはなりえない。だからこそ、時代の要請や市場の動きに対応して、誰に商品を売るのかというターゲティングは常に見直していく必要がある」と解説。
そこで、同社では顧客戦略に必要な基軸として、ターゲティング、顧客収支設計、ブランディングの3つを挙げる。ただ一方で、ターゲティングばかりに固執しすぎると、自らの市場を狭める、ということも経験から見えてきたと話す。
「三越伊勢丹では、これまでターゲティングの設定に最も時間をかけてきたが、今後は会社のフィロソフィー(経営哲学)を伝えていくブランディングを行っていきたい。その上で、限られた資金をどこに投下すれば利益アップに繋がるのかと採算する顧客収支設計、さらにターゲティングへと、経営に対する考え方へのフローを組み替えていく必要がある」
その一例として、伊勢丹新宿店のメンズ館を例に挙げる。
「伊勢丹新宿店のメンズ館では “男である喜び”をスローガンに、日本の男をイタリア人と同レベルまで格好よくさせる店づくりという単純且つ明快な定義をして、順調にスタートさせた。狙いは女性の代理購買より男性が自分で購買する拘りのある層の取り込みを増加させ、男女の購買比率を逆転させる挑戦だった。それが男性市場の改革につながっていった」

