ユニクロ柳井氏がGoogleと競争になると考える理由
情報として商品が消費される世の中については、ユニクロの柳井氏がすでに2016年のインタビューで「いずれ、Googleと競争になる」という示唆的なコメントを残しています。柳井氏がいう「服は情報」とは、世界中のファッションの傾向や消費者の情報を知らなければ競争できない、という意味でしたが、彼自身の言葉をもじって言えば「服もスタバのコーヒーと変わらない」ということでしょう。実際ファーストファッションそのものが服を情報化して成立したビジネスモデルです。
サードプレイスの特長が特に重要でないような暇つぶしや、他人との社交的な交流そのものになると、ブランドにとっては、それはマーケティングファネルのトップに位置するブランド認知や関心の新規獲得に特に意味があるということです。ブランドのマーケターにとっては、自社商品やサービスを発見してもらうための「情報としての商品」を再定義すれば、サードプレイスと相性のある新しいタッチポイントが生まれる可能性があります。
その古典的な例は、銀座ソニービルのようなアンテナストアやショールームですが、逆にアメリカbonobosやワービーパーカーの例のように、オンラインビジネスがショールームストアとして実店舗を持つのは、フィッティングや試着のためという意味だけでなく、デジタルインターフェイスでは難しい、新しい商品に対する気付きや発見、あるいはトータルのブランド体験を提供するためです。
また最近、東京近郊でも通勤ラッシュ時間の前の朝の時間に、JRや私鉄が座席指定の中距離電車を運行するようになっています。これは通勤や移動時間を、サードプレイスとしての価値を高める例かもしれません。業務時間内でもUberもビジネスマン向けに移動オフィスとしての価値を高めることが出来れば、サードプレイスとしてのビジネス機会も増えるかもしれません。
カスタマージャーニーから考えると、サードプレイスは顧客が最終的に達成したい第一目的や最終デスティネーションとは違ったジャーニーを想定する必要があります。それは暇つぶしや脱線、衝動買い、ついで買いの機会を考えることです。そしてブランド側にとっては、この寄り道のジャーニーによって新しいコンテクストが生まれることになります。そしてそれが旧来のオフラインだけでなくデジタルテクノロジーが合わさることによって新しい情報価値を生み出す消費行動が生まれるのです。
エアクローゼットという定額サブスクリプションでスタイリストが定期的に着る服をセレクトしデリバリーするサービスがありますが、不動産業のエイブルと一緒にエアクロエイブルというショールームストアを運営しています。彼らが原宿の実店舗で商品貸し出しするのも、そのようなサードプレイスとしての新しい消費機会が重要だからです。
このように今後、「情報」が商品化していくきっかけになるのは、デジタルテクノロジーやプラットフォームであり、だからこそ柳井氏の口から競争相手にGoogleが出てきたわけです。そしてプラットフォームが自宅やオフィス以外の場所や時間として生まれたサードプレイスをつなげるビジネス機会はどんどん増えていくことでしょう。
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