分散化・時代におけるブランド戦略
創業111年の歴史を持つニューバランス、2008年に創業したライフネット生命保険、2011年にトステム・INAX・新日軽・サンウエーブ・TOEXなどが合併して生まれたLIXILと、背景や商材の異なる3社は、どのようなブランド戦略を展開しているのか。パブリッシャーとの取り組みを紹介してもらう前に、その根底にある考えから聞いた。
ライフネット生命保険の岩田慎一氏は、「保険は信頼ビジネス。まずは創業者である出口治明と、社長の岩瀬大輔の考えやパーソナリティを知ってもらうことで当社に興味を持ってもらい、その2人の会社の商品だったら信頼できるし、人に推奨しようと思ってもらえるように戦略を立てた」と話す。そこで同社では経営陣が率先してSNSで情報発信したほか、書籍出版、セミナー開催、社員によるブログなどを展開していった。
一方で、ニューバランス ジャパンの鈴木健氏は、「歴史や実績がある分、それぞれの消費者のなかにすでにブランドが確立しているため、どこを当社として主張していくのか決めることが難しい。社会の変化に合わせて新しい動向ばかり見てしまいがちだが、ここ数年は原点回帰し、歴史を振り返りながら“ニューバランスらしさ”を再確認している」と語った。
また、LIXILの長島純氏は、「ひと言で住設商材といっても、消費者側の意識は、(窓やキッチンなどの)商材カテゴリーによって大きく異なる。たとえばキッチンについては、能動的に情報を収集する傾向が強いため、ブランドが購買時に大きな影響を与える可能性があるが、窓については、受け身になる傾向が強いため、キッチンほど購買時にブランドが影響しない可能性がある。そのため、コーポレートレイヤー、カテゴリーレイヤー、機能レイヤーなど、商材カテゴリーごとに、強化するブランドのポイントが異なってくるので、より戦略的にブランドを構築していく必要がある」と説明した。
パブリッシャーとの取り組みで重視していること
続いては、パブリッシャーとの試みについて聞いていった。3社ともに、積極的にコンテンツを制作し、情報発信を行っている。
LIXILは生活総合情報サイト「オールアバウト」との取り組みを紹介。同社提供としてリフォームやエコをテーマにした情報ページを「オールアバウト」内に制作し、記事を配信している。長島氏は、「LIXIL商品の情報を伝えるというよりも、まずはリフォームすることのメリットを伝えている。その上で、やがてLIXILブランドに興味をもってもらうことが狙い。第3者から情報発信してもらうことで信憑性も上がるため、まずはお客さまがいる外部メディアにも積極的に出ていく」と話した。
一方で、ニューバランス ジャパンの鈴木氏は、集英社のスポーツメディア「Sportiva」との事例を紹介する。「スポーツブランドとしての認知獲得と、ターゲットとのエンゲージ向上のため、スポーツファンとのタッチポイントが欲しかった。そこで、商品を紹介するというよりも、ブランドが伝えたいメッセージに合う記事を提供する特集ページを制作した」と語った。
また、数あるスポーツ系メディアの中で、なぜ「Sportiva」を選んだかについては、「読み応えのある記事を配信していること。そして、編集長やライターと月1回のミーティングを行い、共感性の高いコンテンツを生み出せる体制をつくれることが理由だった」という。
ライフネット生命保険は、アウトブレインのサービスを活用しながら、オウンドメディアの強化を進めている。その狙いを岩田氏は、「外部メディアを活用したタイアップ広告は掲載・配信期間が決まっているが、オウンドメディアは自社で管理でき、情報のアップデートもしやすい。実際にお金や保険をテーマにした記事を配信したことがきっかけで、保険への検討を生み出せている」などを挙げた。
また同社ではJ−WAVE、東京FMなどラジオ番組のスポンサードも始めている。「ラジオは放送内容をデジタルメディアでも配信しているため、キュレーションサイトにも取り上げられやすい。ラジオは今後も発展性のあるメディアだと思う」と可能性について言及した。
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