【前回記事】「「パナソニック宣伝100年の軌跡」(8-1)スター商品を生み出す—テレビ・録画機器・カメラの広告篇」はこちら

2018年に創業100周年を迎える、パナソニック流の宣伝に迫る対談。第8回は「テレビ・録画機器・カメラの広告篇」です。テレビは「三種の神器」と言われるように、日本の経済成長を語るうえで欠かせない存在。パナソニックは、競合企業と切磋琢磨しながら、個性的な商品、ネーミング、広告によって独自のテレビブランドを築き上げてきました。
後篇の舞台となる2000年代以降は、テレビと録画機器、デジタルカメラ、そしてスマートフォンなどが相互に連携し、新しいテレビの楽しみ方が生まれています。デジタル化に合わせパナソニックの広告はどのように変化していったのでしょうか。多くのデジタル家電のCM制作に携わった、元電通クリエイティブディレクターの宇和川泰道さんに伺いました。
時代の移り変わりを宣言する広告
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—2003年に地上デジタル放送がスタートし、「VIERA(ビエラ)」という薄型テレビの新ブランドが誕生しました。
1971年に電通入社後、パナソニックの音響ブランド「Technics」やテレビブランド「VIERA」のCMをはじめ、様々な広告制作に携わった。2011年に退職。
「VIERA」は、「Vision(映像)」と「Era(時代)」を掛け合わせた造語です。世界各国で販売されるため、何百と出した候補の中から、グローバルな市場で使えるブランド名に絞っていきました。プラズマテレビが一枚の薄い板のようなビジュアルで表現されている「VIERA」発売時の広告は、それまでの箱型テレビとは異なる新しい時代の到来を感じさせるものでした。
その後、「VIERA」のイメージキャラクターをつくろうと、当時映画『ラストサムライ』で脚光を浴びていた小雪さんに出演いただくことになりました。小雪さんには天女や猫など、様々に演じてもらい、「映画を見るなら」「スポーツを見るなら」といろんなアプローチで「VIERA」の魅力を伝えました。
—当時は競合メーカーも相次いで新商品を発表しました。
テレビ画面の大きさ競争があって、CMも「大きい画面で絵がきれい」といったダイレクトな訴求が多かったですね。でも実は矛盾もありまして。CMの映像がどれだけ美しくても、それを見る家庭のテレビの環境は様々ですから、見え方もそれぞれ。最新のテレビに買い替えると、どれだけきれいな映像を楽しめるか、を伝えるのは難しい部分もあります。むしろ小雪さんがCMで美しい背中を見せた、といった出来事の方が強く見る人に訴えるわけです。そのため、どれだけ心に響くシーンをCMの中でつくれるか、というのが勝負でした。
