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小学生が企業にプレゼン!?「こどもクリエイティブエージェンシー」の現場に潜入

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「こどもクリエイティブエージェンシー」を立ち上げた理由

「こどもクリエイティブエージェンシー」を運営する「ごかんたいそう」は、逗子の自然豊かな環境の中で古民家を改装した保育園「ごかんのいえ」や、農園併設の園舎を持つ保育園「ごかんのもり」を運営するNPO法人だ。代表の全田(まった)和也さんは、元々東京で空間プランニングの仕事をしていたが、自身の子育ての経験をきっかけに、6年前にごかんたいそうを立ち上げた。「こどもクリエイティブエージェンシー」は、今年始まったばかりの新規事業だ。

NPO法人ごかんたいそう代表理事 全田和也さん(右から2番目)

「こどもクリエイティブエージェンシー」を始めた理由を、全田さんは次のように説明する。

「僕たちが取り組んでいることは、子どもたちの自尊心、自主性を最大限に育むための場作りです。しかし、世の中では逆方向の過保護化がますます進んでいます。ごかんで伸び伸び育った子どもも、卒園後に入学する学校では自分の意見を求められることは少なく、周りと同調し、大人化していくことが求められます。また、学校教育はインプットが過剰になりがちで、アウトプットの機会が少ないんです。そういう子どもたちに、卒園後も自主性を発揮できる場をつくりたかったのがひとつです。
もうひとつは、僕たちの活動が逗子の山の中で完結してしまうことへの懸念です。僕たちは、都会で起こっている社会の変化やそこで生活している子どもたちにこそ、目を背けずにメッセージを発信したい。こうした思いから、子どもたちにリアルに社会の中で役割を持たせ、アウトプットする場を設けたいと考えたんです」。

全田さんはこれまで多くの子どもと触れ合う中で、子どもが突き抜けた名コピーを生む瞬間や、目をみはるような文字のデザインをする瞬間を目撃してきた。そこで、「これは社会の中でも本当に価値を感じてもらえるものではないだろうか」と考え、「こどもクリエイティブエージェンシー」の立ち上げに至ったという。

そして、チームラボキッズのメンバーが以前ごかんたいそうに興味を持ち、見学に訪れた縁から、クライアントの第1号になることが決まった。そして実現したのが冒頭のプレゼンだ。

プロジェクトは、チームラボキッズの担当者に保育園にオリエンに来てもらうことからスタート。その後、現地調査としてチームラボアイランド平塚店をメンバーで現地調査し、さらに一部の子どもは特別に子どもスタッフ(運営スタッフ)としても参加した。こうして参加側、運営側2つの視点を経験した上でプレゼン案を練り上げた。

ごかんのもり保育園で行われた、チームラボキッズ長谷川さんによるオリエン。

メンバーでチームラボアイランド -学ぶ!未来の遊園地- ららぽーと湘南平塚店を訪れた現地調査(体験)を元に改善案を考えて行った。
一部の子どもたちはスタッフも体験し、運営側の視点でも考察。

「体験後に作戦会議(ブレスト)の場を設けるのですが、思った以上に子どもたちにとって、感覚的な部分、直感で感じたことを言語化して表現することは難しかったようです。結果、試行錯誤、悪戦苦闘満載のプロジェクトとなりました(笑)。色々な工夫を重ねて子どもの意見を引き出し、直前のプレゼン準備では、本当に納品前のエージェンシーオフィスの雰囲気さながら、子どもたちは真剣に夜まで取り組んでいました」

子どもたちの作戦会議(ブレスト)の様子。ひらめきカードや模型を使いながら、子どもの意見を引き出した。
プレゼン直前は予行演習をきっちりと行い、緊張感の高まる中、プレゼン準備に取り組んだ。

チームラボキッズの長谷川さんは、プレゼンを受けた感想を次のように話す。

「思ったよりもよく仕上がっている、というが率直な印象です。よくも悪くも突拍子のない意見はなく、現実的な提案をいただきました。当社は子どもを対象とした事業をしているので、その点で説得力を感じやすかったです。特に子どもへの声がけなどオペレーションに関する意見は示唆に富んでいました。採用したいアイデアもありましたので、現場の店長、事業責任者と提案を整理し、検討を進めているところです」。

現在こどもクリエイティブエージェンシーでは、第2のプロジェクトとして、地元逗子のクラフトビールブルワリー「ヨロッコビール」のラベルデザインなどが進行中だ。

こどもクリエイティブエージェンシーのメンバーには、社員証、こども株券、社員の7つの心構えが配布される。プロジェクトが完了したら、お客様の満足度に応じて、子どもたちに“配当”を行うという。「どんな配当になるかは、子どもたちと話し合って決めたいと思います。おやつが配られるかもしれないし、盛大な打ち上げができるかもしれません」(全田さん)。

「こどもクリエイティブエージェンシーは、習い事でも学童でも塾でもなく、職業体験テーマパークでもありません」と全田さんは言う。

「子どもたちが主体となって『大人にはない発想の枠とひらめき、ときめき』を武器に、実際にクライアントから仕事をうけ、本気で仕事に取り組むプロジェクトです。子どもたちには、この体験を通じて自分の感覚を言葉で伝えられる人になってほしいし、仲間で力を合わせてアウトプットを作り上げる達成感を味わってほしい。そして、子どもとの協業に関心を持たれたクライアントの方には、ぜひお声がけをいただければと思います」。