現代のデザイナーは、小さなカテゴリーに収まってはいけない — カナリア徳田祐司

【前回のコラム】「文脈を整理し、再構築することがデザインの出発点 — Hotchkiss 水口克夫」はこちら

これまで2000名以上が学んできた、宣伝会議のアートディレクター養成講座(以下 ARTS)。本コラムではその講師陣や実績を上げた修了生に、アートディレクターとしてブレイクスルーした瞬間や仕事上のターニングポイント、部下・後輩の指導法などから1つの質問を問いかけていきます。今回はカナリアのクリエイティブディレクターでARTSの講師を務める徳田祐司さんです。

Q.徳田さんから見て、いま若いデザイナーが成長していくために必要なことは何ですか?

回答者:徳田祐司(カナリア クリエイティブディレクター/アートディレクター)

時代と共にデザイナーの役割は変わっていく

ひと昔前までのデザイナーはカテゴリーに分かれ、広告だけ、パッケージだけ、空間だけなどの狭い専門性の中で力を発揮していました。

いまでも基本はそうですが、より広い視野で様々な分野にまたがってデザインをする時代に入っています。現代のデザイナーには、色形を作り出すセンス以上のものも求められています。

そんな時代に、これからデザイナーのみなさんは自分の歩む道をどのように選び、進んでいくのか。早い段階で自分を揺さぶることがとても大切です。

ネットが経済の中心となり、あらゆる分野の中小企業が自由な発想で業界を席巻し、勢いのある経営者や事業主が次々と現れています。彼らは、いままでにないやり方で事業を進めています。

例えば、ネット系新事業の仕事をしていると必ず言われるのが、「カテゴリー4に入れるか?」という話。今までにないサービスが次々に生まれている中で、そのカテゴリーの4位までに入らないと事業として劣勢に回り、その後のレースで勝ちに回ることが困難になる。そうなった瞬間に事業をストップし、次の新規事業を探すという考え方。

いち早く会社を立ち上げ、大きくし、全国CMを打ち、一気に攻勢をかけてメジャーサービス、メジャー会社に名乗りを上げ、これから大きく成長する業界のトップに君臨する。小さな若い起業家たちの日々のドライブ感は、卵から孵って勢いよく大洋に向かって泳いでいくようなスピード感でアドレナリンが出まくるのです。

そんな時代に新しい経営者は、最初からデザインを求めます。それが事業に有効であることを肌感覚で知っているからです。そんな彼らが求めているデザイナーは、小さなカテゴリーに収まっているデザイナーではありません。より広い専門性と、事業主側に立って様々な相談に乗ってくれる心と視野を持っている才能です。
 
新しい会社だけではありません。例えば、老舗の会社が日本には多く存在しています。そんな彼らは、自分が10代目になって時代の波に乗り遅れているとか、先代のつくった財産をどこまで守るべきかなど、ここでも時代のスピードや業界の再編成などに悪戦苦闘しているのです。そんな彼らも、デザイナーには広い視野を求めています。ものづくりの限界を感じると、次はきちんと伝えていくデザインが不可避であると知っているのです。

社会で求められるデザイナーのスキルとは何か?

さらに、デザインは経済界だけではなく、あらゆるところで必要とされています。社会的なアドバンテージが小さい、例えば偏見や既成概念に囚われている分野や、難病、紛争、いじめ、第3の性、女性の権利などの問題。人材やテクノロジー、投資や情報によってその状況を一変させることができますが、デザインも大きな力を発揮するはずです。

もし、デザインを相手から求められていなくても、その分野にデザインが入り込めば、もっといろんな状況がスムーズに、よりよい方向に転換すると思っています。今後デザイナーは、口を大きく開けているだけでは、食べ物を手に入れることはできないのです。
 
では、そこで求められている才能とは何なのか?

デザイナーは色や形を使って、その会社や製品の思いや特徴を人々にエモーショナルに伝える力があります。色や形を生み出す上で、必ず用いる力があります。それは混沌とした状況の中から先の未来を予想し、形へと導く才能です。

それは、整理のための整理をするコンサルティングとは異なる、新しい価値を生み出すための整理です。デザイナーにしかできない才能なのです。その整理から生まれたデザインは、経営の理念と現場に根づいた力強い事業の道具となります。

そして、その才能はどのように培われるのか?
 
それは、あなたしか持ってない体験知と感性です。実技を支える個性です。あなたしか持っていないあらゆる人生の経験や意見、考え、視点が、これから生み出される色形を持ったデザインに反映され、巨大な解決力をもたらすのです。
 
そして忘れてはいけないのが、表現力です。これを磨かなくてはいけません。どんなに整理ができても、それを相手に伝える視覚言語が、相手の心の琴線に触れるものでなくては意味がありません。これは、いつの時代も不変のテーマです。

最近の美大などでは、どうしてか、表現よりコンセプトを重要と考える傾向にあります。それは、間違いです。どちらも重要なのです。表現を疎かにするのは、サッカーで言うならば、ゴールする戦術を語れてもボールを蹴れないのと同じです。それでは90分経ってもゴールなどできません。これら自分の専門分野、得意分野をとことん磨くということ。
 
私たちが持っている才能とは、未来を混沌の状態から予測し、仮説を立てる。社会的モラルのもと、エモーショナルな色形を生み出す演出力を持って相手の心の琴線に触れ、共感を引き出す。結果、社会の大きな潮を作り出す。それは、とてつもなく大きな力なのです。
 
これはあくまで、僕の考えです。あなたはどんなデザイナーになりたいのか?ご自分のこと、考えてみてください。そして、もしデザインという大きな力を持ったら、必ずその力を社会に使う責任をはたしてください。
 
最後に、僕の大好きな映画、スパイダーマンの名セリフから。

「With great power comes great responsibility.」

徳田 祐司
カナリア クリエイティブディレクター/アートディレクター

武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科卒業。電通、オランダのクリエイティブエージェンシーを経て、2007年、デザインエージェンシー、canariaを設立。ブランドのコンセプトメイキング、世界観作りから広告までのトータルデザインにおけるアート&クリエイティブディレクションを得意する。代表作に、いろはす、FLOWFUSHI全ブランド、東京モーターショー2011、パリ発セルフマネージメントスキンケアTHE BOOKのトータルデザイン、UNIQLOグローバルキャンペーン、ANA国際線ビジネスクラスのブランドキャンペーン、三菱地所企業広告、W杯招致活動ロゴデザイン、FANCLブランドリニューアル広告、日本人初となるシャンパンブランドデザイン PERNET&PERNET、京都中勢以、森美術館、“国民と政治の距離を近づける「鳩カフェ」”のデザイン開発及び内閣府専門委員。
iF DESIGN AWARD、Red Dot Design Award、日本パッケージデザイン大賞など、国内外を問わず数々の賞を受賞。日本グラフィックデザイナー協会(JAGDA)会員。日本パッケージデザイン協会(JPDA)会員。

 

アートディレクター養成講座(ARTS)

今、クライアントや世の中から求められる仕事を実現しているトップクラスのアートディレクター陣が、「課題解決のためのソリューションを考え抜く力」「精度の高い判断をする力」「企画意図を自分の言葉で伝える力」というデザイナーが今、必要としている3つの力を鍛え上げる講座です。

<次回の開講のご案内>
講義日程:2018年8月7日(火)から全30回
講義会場:東京・南青山 受講定員:90名
詳細URL:https://www.sendenkaigi.com/class/detail/art_director.php

宣伝会議 アートディレクター養成講座事務局
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