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コラム

デザイナーのためのブレイクスルー講座ーアートディレクター養成講座 講師・修了生が語るー

10年後、20年後にもデザイナーとして必要とされるための3つのこと — 木住野彰悟

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これまで2000名以上が学んできた、宣伝会議のアートディレクター養成講座(以下 ARTS)。本コラムではその講師陣や実績を上げた修了生に、アートディレクターとしてブレイクスルーした瞬間や仕事上のターニングポイント、部下・後輩の指導法などから1つの質問を問いかけていきます。第1回の今回は、講師も務めていただく6Dの木住野彰悟さんです。

Q. 5年後10年後を想像すると、なんだか言葉にならない危機感を感じます。
これからの時代のデザイナーは今、何を学ぶべきでしょうか。

回答者:木住野彰悟(6D/代表)

たしかに、「未来への危機感」よく耳にしますね、「AIにデザイナーの仕事を奪われる」、「今ある仕事の6割7割は無くなる」、「終身雇用はこれからの時代難しい」、等々。デザイナーでなくても同じように不安になるのではと思います。

僕も個人デザイン事務所を経営していますし質問者と同様に心配になることもあります。この先大丈夫かなと。

10年後を考える前に逆に20年前から今がどう変化したか?10年前からどう変化したか? を考えるのはいかがでしょうか。

20数年前、僕はちょうどデザイナーを志して若手のペーペーとして働いていました。クリエイティブの世界では、サイトウマコトさんがバツのポスターでADCグランプリ、青木克憲さんがラフォーレやヒロミチナカノのポスターでADC賞など、graphic poster全盛の時代でした。そんな華やかな世界に憧れて私はグラフィックデザイナーになりました。

10数年前、僕は独立したばかりで右も左もわからずバタバタと自分らしさとは?と思い悩んでいました。 クリエイティブの世界では、CMがメディアの中心でその後、追い越すようにインタラクティブ的なWEBが海外賞を賑やかせていました。

—10年、20年前から今はどの様に変化したでしょうか?

ポスターという媒体は影を潜め、WEBが当たり前になり、メディアとクリエイティブの蜜月の時代が終わりをむかえた様に感じます。

グラフィックデザインは20年ぐらい前からすでにメディアの中心ではなくなっているのだと思います。

ですが、今グラフィックデザイナーの活動の場所は、「ブランディング」、「パッケージ」、「地域活動へのデザイン」、「ソーシャルデザイン」、「空間でのインフィメーションデザイン」等々、活動範囲はかなり広がっているとも言えます。

今までの変化を意識して、グラフィックデザイナーの10年後を考えてみて、、なにを学ぶと効果的か…

うーん…残念ですがそれは誰にもわかりません。

わからない未来を考えても仕方なくて、昔から変わらない普遍的な部分を磨くことでしか、予測できない未来に対応することはできないのではと僕は考えます。

それは決して時代の変化について行く必要は無いという意味ではありません。

その新しい時代に生きているデザイナーが作るデザインであればきっとそれは新しいデザインになるはずですし、20年以上前から、さらに10年後、20年後にもデザイナーとして必要とされる力は何かと考えるとそれは、

1_「あるべき姿を想像できるディレクション力」
これは一番必要なことかもしれません、全方位360度可能性のあることを、10度くらいに絞って深掘りして作業のクオリティを上げることができますし、時間の短縮にもつながります。

2_「感じ入るディテールを書ける技術力」
文字通りですが、ただの線でも腕の良いデザイナーが書けば魅力的なビジュアルになりますよね。そうでない線は、ただの線なんです。

3_「人間力」
この人間力とは、いい人とかそういうことではありません。アートディレクターとして動く場合は、ある意味現場のリーダーで人を率いるわけですから、どんなタイプであれ信頼されていないと指示をしても前向きに動いてはもらえませんよね。また、プロジェクトを進めていくとデザイナーがイメージしてる方向ではない、デザインを悪くする様な状況に向かいそうになることがよくあります。よくあるレベルではなく、いつも起こります。その状況を良い方向に持っていかないと、良いデザインは出来ません。

イメージしていたデザインを悪い方向に持っていく指示などに対して、毎回良い方向に打ち返さないといけませんし、相手の漠然としたデザインに対する不満を聞き出すコミュニケーションも必要になります。そういったことを総称して「人間力」と言っています。

上記の3つだと僕は思います。
まぁ、残念ながら僕はまだ何一つ出来るようにはなってはいないのですが。

とはいえ突然10年後にいくわけでもないですし、目の前のデザインを一歩一歩しっかりとやっていくこと以外に、未来に生き残れるデザイナーにはなれないのではと、ある意味楽観的に考えています。

そんな楽観的な考え方の僕は、この先何を勉強していけばよいでしょうか?
ぜひとも教えていただきたいと考えていた今日この頃です。。

木住野彰悟

東京都出身。2007年にグラフィックデザイン事務所6Dを設立。ブランディングを中心に、ロゴやパッケージ、空間のインフォメーションデザインまで幅広く活動。現在、東京工芸大学芸術学部デザイン学科准教授も務める。近年の主な仕事にKIRIN Home TapやKASHIYAMA the Smart Tailor、JAL Steam Schoolのアートディレクション、小田急線路線図、ロッテZEROパッケージ、登戸駅のドラえもんサイン計画など。東京ADC、JAGDA、SDA、D&AD、カンヌ、DFAAなど国内外のデザイン賞を受賞。

 

アートディレクター養成講座(ARTS)

今、クライアントや世の中から求められる仕事を実現しているトップクラスのアートディレクター陣が、「課題解決のためのソリューションを考え抜く力」「精度の高い判断をする力」「企画意図を自分の言葉で伝える力」というデザイナーが今、必要としている3つの力を鍛え上げる講座です。

<次回の開講のご案内>
講義日程:2019年8月6日(火)から全30回
講義会場:東京・南青山 受講定員:90名
詳細URL:https://www.sendenkaigi.com/class/detail/art_director.php