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コラム

関西で戦う。クリエイターの流儀

これからは、住まいが経済圏に。京都の外れで次のルールを作る。

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【前回コラム】「兵庫県西脇市で実践する、新たな“人材の地産地消”と働き方」はこちら

関西でかたちラボという屋号でコピーライターをしている田中です。この連載「関西で戦う。」の1つの目的として、取材対象者から「これからの時代で戦うためのヒント」をお聴きするというものがあります。今回で取り上げるのは13人目。その半分あたりで、取り上げる方々の共通点が見えてきて、新規で取材対象者を選ぶときは狙いを定めて取材をお願いしています。その共通点とは、「自分で経済圏を作り、ユニークな活動をしていること」。個人カンパニーをしている田中にとって、取材を通してこの上ない最高の先生たちと出会っている感覚があり、毎度刺激をいただいています。今回は、不動産業界の中で新たなルールを作り、独自の経済圏を生み出している方のお話です。

株式会社めい・扇沢友樹さんの場合

「関西で戦う。クリエイターの流儀」第13回目に登場していただく扇沢さんは、「漫画家に特化」「ものづくりに特化」など、一風変わった切り口のシェアハウス事業などを展開する不動産企画会社「株式会社めい」を運営しています。京都を拠点に、土地の文化や文脈を読み解き、新たな価値を提案している扇沢さんから事業のことをお聞きし、これからの時代の経済圏についてお聞きしました。

扇沢友樹
http://mayshare.chu.jp/

2011年に「株式会社めい」を設立。その年の5月からシェアハウス事業「めいちゃんち」を展開。2012年には京都市の事業で若手漫画家のためのシェアハウス「京都版トキワ荘事業」に参画。2015年にはものづくりに携わる方のための職住一体型のクリエイティブセンター「REDIY」を運営。現在、「株式会社ゆい」も設立。

 

>職住一体型のクリエイティブセンター「REDIY」の外観

京都で実践する次の時代の生き方は、職住一体のシェアハウスにあり。

株式会社めいが生まれるのは、扇沢さんが大学卒業を間近に控えた2011年1月。現在、公私ともにパートナーである日下部淑世さんと出会ったことで会社を設立することとなりました。お互いに内定先は決まっていたものの、「こんな事業をやりたい」という話をして盛り上がり意気投合。日下部さんはアーティスト支援としてシェアハウス事業を、扇沢さんは人口が減っていく中で不動産業界の新たなルール作りを自分たちのやりたいこととして掲げ、「職住一体のシェアハウス」をキーワードにしました。シェアハウスもまだ珍しかった2011年に、最初のシェアハウス「めいちゃんち」はどのように立ち上がったのでしょうか。

—「めいちゃんち」って名前からユニークですよね。なぜ、このような名前なんですか?

扇沢:会社名が「めい」で相方の名字が「くさかべ」でして。

—くさかべめい・・・。あ、「となりのトトロ」に出てくる女の子ですね。妹の方。

扇沢:そうなんです!実は「めいちゃんち」の管理人は世襲制で、初代を務めたのが相方でして。初代めいは、くさかべめい(笑)。

—管理人の「めい」は世襲制なんですね。今は何代目なんですか?

扇沢:三代目です。今は19歳の女の子が襲名しています。そもそもシェアハウスって20代前半のもの。運営をする管理人が歳を取ると住人との感覚がずれていきます。暮らし方のスタイルって、音楽や服の趣味以上に世代感が出やすいなと。なので、「めいちゃんち」の管理人は3年に一度変わり、そのことで住人の世代も次にスライドして交流できる場所となります。5人が入居できるシェアハウスなのですが、お金を儲ける仕組みも作りました。それは、シェアハウスのスペースのイベントや勉強会で収入を得るというものです。

—それは入居者の方が自ら企画して実行するのですか?

扇沢:そうです。居住スペースは2011年当時35,000円で借りられたのですが、イベントや勉強会を開いて収入を入居者たちと分配することで住まいを持つというより、「場の運営」を行うことができます。大学でも会社でもなく住居に新たな価値を生む場所を作るという実験を、知識や機材をシェアしながらやれば、面白い人材がここから輩出されるだろうと。入居者にとっては、家賃を払って住まいを払うことと新たな仕事を生む投資となっていると思います。

めいちゃんちで開催している勉強会の風景

—面白い関係性ですよね。入居者から面白い人が輩出されれば、「めいちゃんち」自体の価値が上がりますしね。これからの時代、場所や不動産の価値はそこに集う人たちが将来どのように活躍するかによって変わっていくという意味でも「投資」ですし。初代「めいちゃんち」を手がけてからの動きはどのようなものとなりましたか?

扇沢:会社としては2年目の終わり頃から、京都市との事業がスタートしました。それが若手漫画家たちのシェアハウス「京都版トキワ荘事業」です。若手漫画家支援として東京のNPO団体が取り組んできた事業の京都版立ち上げをお手伝いしたのですが、この時に行政と組んだことがとても大きかったです。それまでは、不動産屋さんを回るにしても10軒回って9軒は断られていました。しかし、行政と仕事をしたという信用度は大きくて10軒中10軒がオッケーになったんです!

—何度目かの転機を迎えて、次に何を仕掛けようと思っていたのですか?

扇沢:2013年頃、自分たちが場所を借りて企画するだけでは何か足りないと思っていた時、DIYで空間を作る能力が欲しいな、と。技術が学べる学校へ行こうかと悩んだ時期もありましたが、自分たちは企画やファイナンスに特化して物作りができる人たちと一緒に場所をシェアしようと思いました。図面を書いて、手を動かせる人たちとワークスペースを持ったら、きっと仕事になるはず。工房付きのオフィスを探していた所、今の物件と出会いました。しかも上のフロアはシェアハウスができる場所。それが、ものづくりに特化した職住一体型の「REDIY」です。

次ページ 「場所の価値を上げる作り手のためのREDIY、そして新たな展開へ。」へ続く