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ブランドや企業のマーケティングは、音楽コンテンツで変えることができるだろうか?【Adver Times Day 2019 Spring】

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「宣伝会議サミット2019春」が4月23日と24日の2日間、東京国際フォーラム 展示ホールにて開催された。広告・マーケティング界を牽引する方々が広告界の新しい希望について活発な議論を行った。本記事では24日に行われた、音楽やエンタメを活用したブランディングやマーケティングについての対談をレポートする。


講演者
デジタル音楽ジャーナリスト
ジェイ・コウガミ 氏(左)

ソニー・ミュージックレーベルズ
第3レーベルグループエピックレコードジャパンオフィスRIA制作部 部長
梶 望 氏(中央)

トライバルメディアハウス
『Modern Age/モダンエイジ』事業部事業部長/レーベルヘッド
高野 修平 氏(右)

マーケティングの核になる「3つのキーワード」

コウガミ:今回は音楽やエンタメとのタイアップによる広告マーケティングがテーマですが、まずは高野さん、お土産を持ってきてくださったんですよね。

高野 修平 氏

高野:はい。今回は3つのキーワードとして、①可処分精神、②マーケティングファネルを超える、③トライブという、お土産を用意してきました。

①の「可処分精神」というのは、SHOWROOM代表の前田裕二さんがおっしゃっていた言葉です。衣食住が満たされた今、人を惹きつけるのは物やお金ではなく、精神的な充足であり、それを提供できる企業が勝ち残っていくという考え方です。

音楽やエンターテインメント(エンタメ)は、音楽を聴けば青春時代の思い出が蘇るように、深く心に刻まれるものであり、人の感情や行動、思想にも大きな影響を及ぼすことがあります。そういう意味では、音楽やエンタメは可処分精神を獲得するうえで非常に強い力を持っている。

一方で、企業やブランドは音楽やエンタメに比べると可処分精神を獲得しにくいのではないかと考えています。可処分精神を奪い合う時代がくるとしたら、企業やブランドは音楽やエンタメとタッグを組むのも一つ手になるのではないでしょうか。

続いては、②の「マーケティングファネルを超える」です。

一般的なマーケティングファネルにおいて、生活者は「認知・潜在層→興味・関心層→検討層→購入者層」というステップを経て、ファンになります。ところがそのフローを飛び越えてファンになることがあるんです。そのパターンをタイアップに当てはめてみましょう。

皆さんも経験があるかもしれません。僕は時計が好きですが、G-SHOCKには可処分精神を占められていません。数ある時計ブランドのうちの一つと捉えています。可処分精神はおろか可処分時間も可処分所得も奪われていない状態です。しかし、少し前にイギリスのアーティスト「Gorillaz」とコラボした時計が発売されたのです。

「Gorillaz」の大ファンの僕としてはこの時計を認知した瞬間、購買へのアクションが発生しました。結果的には買えなかったのですが、その後今度はブルーノートレーベルとコラボしているG-SHOCK商品があることを知った瞬間、再び僕は購入ボタンを押していました(笑)。

つまり、エンタメや音楽には、特急電車のように各ファネルをすっ飛ばして終点(購入)まで向かわせる力があります。これは僕の中でこれまでさして興味もなかったG-SHOCKが、好きなアーティストと関わることで一気にマーケティングファネルを超えたことを意味します。

音楽やエンタメと商品やサービスのタイアップは昔からあることですが、それはきっとなんらかの音楽やエンタメに可処分精神を奪われているからこそ、ブランドは可処分精神を占められているファンのエネルギーを、そのままブランドにも向けてほしいと考えていると思います。

③のキーワード「トライブ」は、「年代や性別を超えて、共通の趣味嗜好や価値観を持っている人たちで形成される部族」を指します。わかりやすく言えば「〇〇が好きな人たち」です。この情報があふれる世の中で、コンテンツ・コンタクトポイント共にオールターゲットに訴求できるものはありません。どのようにターゲットを絞るかが重要になります。

これからの時代は、非常に細分化された趣味嗜好を持った人たち同士を、どのような趣味嗜好のレイヤーで捉えていくが重要になります。そうしたなかで、ターゲティングにトライブという概念を入れることは間違いなく必然になってくると思います。

次ページ 「音楽にはブランドを記憶させる力がある」へ続く