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ブランドや企業のマーケティングは、音楽コンテンツで変えることができるだろうか?【Adver Times Day 2019 Spring】

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コラボの前に、目的と理由を明確にする

梶:僕が思うに、同じエンタメでも、動画はネタで映像は作品だと思うんです。瞬間風速的に話題にしたいと思えば、YouTuberやタレントさんを起用してネタを作ればいい。

だけど、高野さんがおっしゃったように、中長期的なブランディングを考えるなら、映像でも音楽でも、作品と寄り添い、長いスパンでお気に入りを増やしていかなければいけない。宇多田ヒカルと「サントリー天然水」のコラボはかれこれ3年間やっていますし、コカ・コーラがAIの「ハピネス」とコラボしたキャンペーンは5年間やっていました。

いい作品は長く愛される力を持っているので、中長期のブランディングに向いています。今後音楽やエンタメとのコラボは、短期的なKPIを求めるか長期的なKPIを求めるかによって、やり方が両極端に分かれていくでしょうね。

高野:たしかに強いブランドには一貫性があると思います。サントリーの天然水もそうですけど、短期的な視点なのか長期的な視点なのか、それぞれKPIをちゃんと決めているところは強いですよね。

音楽には「記憶に残る」という力がありますから、メロディーを聞いただけでブランドを想起させることだってできます。音楽は、それだけ大きな価値を生む可能性を秘めているということです。

ただし、何をなぜ届けるのかちゃんと考えないといけない。そうしないと、梶さんがおっしゃった「なぜこのアーティストなのか」「なぜこの曲と組むのか」をちゃんと説明できませんから。何も考えずにやったら、ファンだってわけがわからないと思うんです。

個人的な考えですが、音楽マーケティングは、ブランドがマーケティングを行う中で選ぶ手法、つまりCRMマーケティングやソーシャルメディアマーケティング、ダイレクトマーケティングのような手法のなかのひとつの選択肢だと思っています。

それが、時にはプロモーションやブランディングで機能することもあるわけで。

だから僕らが音楽マーケティングをやる時は、そもそも本当にそれが必要なのか、というところから考えます。場合によっては「音楽」である必要はないかもしれませんから。

戦略と戦術をセットで考えなければ、音楽もエンタメもただ消費されて終わってしまうと思うんです。でも、それはすごくもったいないことですよね。誰かの心の中に生き続けるためにはどうすべきかを常に考えて取り組んでいます。

ジェイ・コウガミ 氏

コウガミ:最後に、サブスクリプションやストリーミングが音楽やエンタメのプラットフォームとなった時に、マーケティングはどのように変わっていくのでしょうか。

梶:最近面白かった事例をお話しすると、うちの大ヒットした邦楽新人アーティストと、日本では無名の邦楽アーティストの曲が同じ日に発売してSpotify上では同じ再生数だったということが起きました。

前者の再生は90%が日本国内ですが、後者は90%以上海外で再生されていたんです。

つまり、ストリーミングの登場によって、ヒットの定義が変わってきているんです。繰り返しになりますけど、CDを買わせたら一丁あがりではなく、長い期間何回も聞いてもらうマーケティングに変わってきたわけです。しかも、ファンは国内にかぎらない。というか、海外の人にも聞いてもらえるようなマーケット、作品を作っていかないと、日本の音楽業界は海外のように右肩上がりの成長は見込めません。それをいかに作っていくかが、我々の課題です。

そのひとつのトライアルとして、資生堂の「ANESSA」と、楽曲「Summertime」(RiRi、KEIJU、小袋成彬)とのコラボレーションを実施しています。ANESSAはアジア圏に強いブランドなので、アジア戦略を一緒にやっていこうといろいろな施策を組んでいます。

こんな風に、今後は海外展開の意識を持った企業や、海外に強いブランドともどんどん組んでいきたいと思っています。