※本記事は2020年11月号『ブレーン』にも掲載されます。あわせて、TCC賞2020最終審査委員による講評も掲載されます。
松井一紘(まつい・かずひろ)
1987年山口県下関市生まれ。ロックスターを夢見てイギリスへ留学し、帰国後に早稲田大学文化構想学部入学。2012年ティー・ワイ・オー新卒入社。現在クリエイティブ部門SPARKに所属。受賞歴に2019年ACCフィルム部門グランプリ、OCC賞など。
ミュージシャン志望からコピーライターに
山口県出身で、高校卒業後はイギリスに留学してミュージシャンを目指していました。帰国後、日本の大学に入ってから広告の仕事に興味を持ったのは、「ものづくりに携わりたい」という当時の思いが原動力になっています。あと留学先でお世話になった日本人の方が元CMプロデューサーで、「吉田大八さんと(同じ会社の)同期だった」と話していたんです。それがティー・ワイ・オー(TYO)のことだと気づいたのは、就職活動を始めてからでした。
活字の世界に興味があったので、当初からコピーライター志望でした。でもTYOにはプロダクションマネージャーとして入社したんです。当時は職種の違いをわかっていなくて(笑)、制作会社に入ればいつかコピーの仕事もできるのでは?と思っていました。だから入社して半年間は研修も兼ねて、制作の仕事をしていました。
そんな折、広告主との直案件を増やそうと発足した社内のチームに声をかけてもらって。念願のコピーライターとして働けることになったんです。とはいえ、まだ新しいチームだし自分も駆け出しなので実績ゼロからのスタート。競合プレゼンに勝つことに注力する日々が5年ほど続きました。
「本当に実現したい企画は自分で動かせ」
今回受賞したブックオフの仕事は、2016年ごろに始まりました。セールの告知広告などを任せてもらい、ゼロからクライアントとの信頼関係の土台を築いていけたのは大きかったです。クリエイターを信じてくれて、僕らの熱意に対して一切の守りの姿勢を見せないというか。だからいつかここぞという案件が舞い込んだら、勝負に出たいと思っていました。もうひとつ、社内の売れっ子ディレクターである佐藤渉さんと仕事をするというのも大きな目標でした。
その2つの目標が掛け合わさって生まれたのが、受賞した「ブックオフなのに本ねぇ~じゃん!」の企業CMです。元々のオリエンは、「『ブックオフには本だけではなく、洋服もスマホもある』と訴求をしてほしい」という内容でした。寺田心さんに出演をお願いしたのは、2018 年の大みそかに観た『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!』で芸人さんにツッコミを入れるシーンが印象的だったから。それを見て「フィクションは本だけにしとけよ~」というフレーズが浮かんできました。
