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8名のマーケターが語る、コミュニケーション戦略の歴史と進化〜「手書きの戦略論 特別講座」講師座談会

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どの戦略論も万能ではないと知るからこそ、次に進むことができる

佐藤:『手書きの戦略論』はいっぺんに7つの戦略論を扱うところに意味がありますね。なぜなら、それぞれの戦略を自分で関連づけて考えられるからです。実はそういう本や講義ってないんですね。「7つの戦略論」とフラットなタイトルになっていますが、「クチコミを学ぶならダイレクトも学べ」という風に言ってもらったほうが響く人もいるんじゃないかな?

木村:冒頭の宮腰さんの話じゃないけど、僕は批判的な視点を持ってこの講義を見るといいと思います。世の中は「できること」が語られがちです。「この戦略論こそ万能だ!」みたいな形で謳われるけど、どれもそんなことはない。1つの手法やフレームで解決できるような生やさしいものじゃない!と言いたくて。

「できないこと」に注目するほうがむしろ大事で、「どの戦略論も万能ではない」というところにこの本の大事なメッセージがあると思います。どんなマーケターにも得意分野や信じているもの、とらわれている発想法や戦略がある。自分じゃなかなかそこから抜け出せないものです。そんな時に、この本のように俯瞰の視点を持てると、その人自身も次のフレームに進めるんです。

「手書きの戦略論」より。戦略同士の関係性や立ち位置の違いについても解説されている。

宮腰:最近データサイエンスの領域が盛り上がってますが、まさにデータサイエンス万能論のような言われ方をすることに危惧を抱いてます。一方で、データサイエンスの中では最近、複数のモデルを組み合わせて世の中の現象を解明すべきだという「多モデル思考」という考え方が出てきています。それは1つのモデルの限界を知るということで、とてもいい呼びかけだと思います。

木村:それを僕は「ハイブリッドエクスパティーズ」という言い方をしています。エクスパティーズとは、専門知識、専門技術のこと。1人の人間の中で、編集者とデータアナリストとか、複数の視点でケンカしながら考えるようなイメージで、その中から新しく生まれてくるのがいいと思うんです。

20代の頃は1つの専門性を突き詰めればいいと思いますが、大人になるとそれでは行き詰まるでしょう?だから、複数の視点でできることを広げていく必要がありますよね。

菅:お客さんと直接の接点を持つダイレクトにこそ、ブランドの考え方が大事だったりしますからね。講義でも触れた「真実の瞬間」がまさにそういう話で。具体で起きている事象を概念で解釈する時に、一見異なる概念同士を繋いで考えてみるやり方が有効で、そうすることで本質を正しく解釈できることがあると思います。『手書きの戦略論』の面白さは“論”を飛び越えて繋ぎ合わせて考えることで、解釈が深まるところにあります。

須田:「守破離(型を学んで型を離れる)」という言葉がありますけど、形式知をむやみに信奉すると危ないですよね。形式を一度身に着けて試したら、別の戦略論とどう組み合わせようか?と自分なりに考える発想が大事だと思います。
この講座を聞く方や本を読む方に覚えておいてもらいたいのはそこで、信奉しすぎず、自分ならどう組み合わせるか、講義もどれを組み合わせてちょいつまみするか、聞き手の方にアレンジしていただけるとよいと思います。

平塚:そのトラップはありますよね。特にこうした講義を受ける方は真面目な方が多いと思うので、そこはお伝えしておきたいところです。「7つの現象(戦略)がある」というよりむしろ、「1つの現象を7つの戦略メガネで見ると7通りにしゃべれる」という感覚が正しいかもしれませんね。

宮腰:デコンストラクション(世に出た広告を見て、その背景にある戦略やオリエンを推測して紐解くこと)する時も、この7つの戦略の視点でできるんじゃないですか?去年か一昨年、ジャパネットたかたさんがついに「30分以内にお電話ください」をやめて、「いつでもいいです。いつでも検索してください」とやって話題になったんです。ダイレクトの世界では「ホットなうちにすぐに刈り取れ」が定石ですが、エンゲージメント論やブランド論から考えれば、そのほうがお客さんとの繋がりができるということでしょう。そういう事例がどんどん出てくるでしょうね。

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