新型コロナウイルス感染拡大から約1年。手探り状態だった「Withコロナ」の生活も新たなスタンダードになりつつある。これからのニューノーマルな社会において、生活者に響く広告表現とは何なのか。電通 執行役員の佐々木康晴氏、博報堂ケトル 取締役・エグゼクティブクリエイティブディレクターの木村健太郎氏、もり 代表の原野守弘氏に話を聞いた。コロナ下で話題となった広告コミュニケーション事例をもとに、広告表現の現在地を探る。
コロナ禍を機によからぬ習慣と決別
—新型コロナ感染拡大以降、広告界にも様々な変化が起きています。この1年で新しい時代の空気を取り入れ、印象に残る広告を発信した国内外の事例を挙げていただけますか。木村:
海外の事例ですごくいいなと思ったのが、業界やブランド横断で社会課題に向き合う事例ですね。スペインの「#fuerzabar(Keep Bar Strong)」は、ビールメーカーであるアムステルビールとクルスカンポ、ハイネケンが協働したバー救済のための事前チケット販売キャンペーンです。それぞれのブランドロゴをつなぎ合わせた「We are family」というキャンペーンロゴも制作されました。
もうひとつが、インドのハンドソープメーカー、ライフブイ(Lifebuoy)による「どんなブランドでもいいからハンドソープを使って手を洗おう」というキャンペーン。競合ブランドも賛同して大きなムーブメントになりました。
国内でも、ベネッセが休校になった子どもたちのために「きょうの時間割」というオンライン教室を始め、有名人たちがボランティア講師として集まりました。2014年に開設されたインターハイの全競技をネット中継する「インハイ.tv」と同じ構造です。「子どもたちに授業を受けさせたい」、「選手を応援したい」というみんなが共感できる志があって、場所があって、賛同者が集まって協力するというスキームが特徴だと思います。
