これまでのCMのつくり方を「壊すために知っておく」~クリエイティブ・クリニック②~

【前回記事】「“広告の過渡期”に「こうあるべき」という軸を持つ~クリエイティブ・クリニック①~」はこちら

過去3期、大好評を博した講座「高崎卓馬のクリエイティブ・クリニック」が満を持して復活。開講に際して、講師の高崎卓馬さんが、後輩の佐藤雄介さんと対談し、企画の考え方や、教えること・学ぶことの可能性を探った。
ずいぶん前に、なんだか目つきのするどい後輩がいるなと思った。独特の話法で企画をつくろうとして、なんだかめちゃくちゃなものばかり描いてきてた(気がする)。佐藤雄介という名前だった。それからたまたま企画の技術のようなものを教える機会があった。
ちょっと前のことだ。それから佐藤雄介はあっという間にメジャーな存在になった。僕が2度ほどチャレンジして敗れたカップヌードルで颯爽と時代はこっちだよ、とやってみせた。文法なんて壊すためにある。それをあんなでかいステージでやっちゃうなんて。自分が考えもしないものはどんな角度から生まれているのか。佐藤雄介の仕事はいつも気になる。<高崎卓馬>

 

「テラゴヤ」で初めてCMを具体的に学んだ

高崎

:前に、僕が電通社内でクリエイティブの若手社員向けに「テラゴヤ」という社内研修のようなものをしていて、(佐藤)雄介や栗田雅俊が受講生だった。あの頃って、雄介はもうCMプランナーだったっけ?

佐藤

:CMプランナーでしたね。クリエーティブ局に配属された1年目からCMをつくっていました。そんな僕ですが、新人研修とかを除けば、会社に入ってからCMの表現を具体的に教わる機会は高崎さんの「テラゴヤ」が初めてでした。面白かったですね。特に「説明セリフはなくすべし」といった教えが印象に残っています。高崎さんは受講生をあまり褒めないじゃないですか。あれがとても良かったですよね。

高崎

:そうだっけ?

佐藤

:もっと褒められるのかなと思ったら、あまり褒めなくて。だから、たまに褒められるとうれしくて。

高崎

:すぐ当事者になっちゃうんだよね・・・この目の前にある企画の点数をどうやったらあげられるだろう。意図はここにあるから、それをどうしたらいい着地にできるだろう、って考え始めちゃう。100点満点でもうなにも考えなくていいなんて企画はこの世にないから。でもこのあいだ監督にも言われたなあ、編集室で「いい!」ってあんま言わないから凹むって。それも同じで当事者としてどう点数あげるかしか考えないからなんだけど・・・

佐藤

:今になって、その気持ちがよくわかります。

高崎

:雄介の企画に対する考え方って僕とはOSが違っていて、既存の文法に乗ること自体を疑ってかかるタイプに見える。だから、アウトプットに仮説を感じるのかな。表現の文法に安易に乗っからないようにしてるよね?

佐藤

:既存の文法のまんまだと新しいものは生まれにくい、とは思っています。なので、まず表現の手前から考えます。企画の土台づくり、といいますか。「この土台なら、どうやっても表現が新しくなるだろう」というところからスタートできると、結果的にどういうルートに行こうとも新しいものになるだろうな、と。基本的に“新しさ至上主義”なので「新しいものは良いことである」「広告的に強くなる」と思っています。

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