日本のブランドロゴにAppleのようなシンボルがないのは、なぜか?

図像化=アイコン化は独自性への回帰

文字のみ=アルファベット化が国際化の過程と考えると、基本的には文字のみ(発音可能なアルファベット化された)のロゴがグローバルでは標準なものと言えます。そして音声化においても、実は国別のアイデンティティは音声として保持されています。逆に言えば、日本っぽい、フランスっぽい、ドイツっぽいなどの音声的特長はアルファベット化という標準化を通して明確になるということです。

次の変化となるシンボル化、図像化のような変化はどうやって起きるのでしょう。ここはデジタル化というのが大きなきっかけとなりますが、標準化=音声化の後に出てくるある種の反動として見られる変化として捉えることができます。

その一例が日本航空(JAL)です。初期のJALのロゴはアルファベットのJALが赤い日の丸に直線的に描かれたものでした。航空会社は当然のことながら基本的に国を代表する国際的な企業ですから、最初からアルファベット化=標準化が基本でした。それと同時に日本を代表するイメージ(日の丸)を含めて最初から日本らしさを意識するデザインが用いられて、そのなかでも好評だったのが、画家の永井郁氏の鶴のイラストで、これが日本航空のイメージを作り上げました。赤い鶴が翼を広げた通称「鶴丸」の図像アイコンは、これまで鶴をモチーフに日本の家紋から作られたものを、1959年にロゴとしてデザインし、その後再度89年にデザインし直され、アルファベット表記のJALというロゴとともに使用されてきました。鶴丸が姿を消すのはJASとの統合によって航空界会社としての規模が拡大した2003年です。この時代は世界的なブランドデザイン会社ランドーアソシエイツによってJALのアルファベットロゴが再度ダイナミックに再デザイン化されてメインロゴに統合されたのでした。

しかし、その9年後の2012年に、再度鶴丸のロゴが復帰します。これは2000年代に日本航空が経営悪化に陥り企業再生支援機構による経営再建を果たし再出発のときに再度デザインされて再導入されたわけです。

図像化=アイコン化とは、JALの歴史的背景を考えると面白いのですが、原点的な回帰でもあり、もともと標準化を経たあとに、顕著になるブランドの独自性のシンボル化ということです。これは、逆戻りしているように見えるかもしれませんが、アルファベット化=音声化=標準化を経た後でない限り、この独自性が際立たないのです。いうなればアルファベットによって一度「わかりやすい、認識しやすいもの」として認知された後に、図像としてのシンボルが効いてくるわけです。そして、それは過去に使われていた知名度の高い資産のなかから選ばれ、再び脚光を浴びたというわけです。

次ページ 「ブランドロゴの独自性はデジタルにおける視覚優位に適したものが選ばれる」へ続く

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鈴木健(ニューバランス ジャパン マーケティング部長)
鈴木健(ニューバランス ジャパン マーケティング部長)

1991年広告会社の営業としてスタートし、ナイキジャパンで7年のマーケティング経験を経て2009年にニューバランス ジャパンに入社し現在に至る。ブランドマネジメントおよびPRや広告をはじめデジタル、イベント、店頭を含むマーケティングコミュニケーション全般を担当。

鈴木健(ニューバランス ジャパン マーケティング部長)

1991年広告会社の営業としてスタートし、ナイキジャパンで7年のマーケティング経験を経て2009年にニューバランス ジャパンに入社し現在に至る。ブランドマネジメントおよびPRや広告をはじめデジタル、イベント、店頭を含むマーケティングコミュニケーション全般を担当。

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